泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

PayPayが火を付けたキャッシュレス決済戦争が向かう未来(上) テクノロジーアナリスト/GFリサーチ 代表 泉田良輔

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メルカリもスマホを活用したキャッシュレス決済「メルペイ」を開始

 こうした大型キャンペーンという「空中戦」が続くなか、スタートアップ企業もスマホを活用したキャッシュレス決済サービスに参入している。

 例えば、フリーマーケット(フリマ)サービスを展開するメルカリは2019年2月から「メルペイ」というサービスを開始した。同社が提供するフリマアプリのMAUは1299万(2019年6月期第3四半期)にも及び、成長が続く。そのフリマアプリでの決済にメルペイという電子マネーを使えるようにしたのである。

 メルペイの特徴は、フリマの売上金を全国の指定店舗(一部、ECサイト)での支払いに利用可能にすると同時に、売上金がない場合も銀行口座からフリマアプリへチャージして支払いに利用できるようにしたことである。「iD(アイディー)」という電子マネー決済に加えて、スマホでのコード決済に対応しており、メルカリというCtoC(個人間売買)サービスを軸にしたキャッシュレス決済サービスといえる。

 メルペイではアライアンスを軸としたオープンな利用者拡大戦略を推進している。すでに、ここまで三井住友カード、KDDI、JCB、LINE Payとパートナーシップを組み、各社が提供する決済インフラなどを活用しつつ、LINE Payについては加盟店の相互開放を計画している。メルカリというCtoCサービスについてその決済を便利にするだけではなく、業務提携を通じて、ユーザーとの接点を拡大しようという狙いだろう。

 メルペイも利用促進に向けたキャンペーンを行っている。4月26日から5月6日までの期間限定で「GW半額ポイント還元」を実施。支払額の50%相当をポイントで戻した。また、6月14日から6月30日まで「日本全国まるっと半額還元!キャンペーン」を実施。支払い額の50%相当 (一部70%)をポイントで還元している。しかし、「GW半額ポイント還元」は2500ポイント、「日本全国まるっと半額還元!」は2000ポイントがそれぞれ付与の上限である。

 メルペイがPayPayのような巨額の還元キャンペーンを避けている背景にはメルカリ自体が事業の拡大途上にあることが挙げられる。2019年5月9日に発表した2019年6月期第3四半期の累計決算では、売上高こそ373.8億円と対前年同期比43%増だが、営業損失は59.8億円と前年同期における19.0億円の営業損失からさらに損失幅が拡大している。

 メルカリは連結で968.5億円のキャッシュを保有しているものの、米国でも事業を拡大しているところだ。これではPayPayやLINE Payのような現金バラマキキャンペーンは容易ではない。おそらく、キャッシュレス決済戦争におけるメインプレーヤーの一角には食い込みたいだろうが、現時点では経営資源を分散させることになり、負担が重いだろう。

 次回は、より広い観点から最近登場したキャッシュレス決済サービスを分類し、「○○ペイが乱立していてわかりにくい」という疑問に答えたい。

フェイスブックが発表した仮想通貨、スマホでキャッシュレス決済も可能に

 現地時間の6月18日、米フェイスブックは「リブラ(Libra)」という仮想通貨(暗号資産)を使った金融サービスを2020年に始めると発表した。リブラをベースにした金融サービスの一つとして、スマホアプリで送金に利用できるようにするとともに、将来は買い物での決済機能に利用できるようにする見込みだ。リブラという名前は、古代ローマの通貨・重量の単位に由来するようだ。リブラは米マスターカードや米ビザなどが加盟する協会で管理する。サービス開始までに加盟組織を100社・団体以上にする予定という。フェイスブックの月間アクティブ利用者数は世界で23億2000万人(2018年12月31日時点)もある。本格的にサービスが始まればかなりの普及が期待される。

(つづく)

参考情報)

[1] 『ソフトバンク株式会社 2019年3月期決算説明会』(ソフトバンク)

[2] 『ヤフー株式会社2018年度通期および第4四半期決算説明会 プレゼンテーション資料』(ヤフー)

[3] 『第三者割当増資の実施について』(PayPay)

[4] 『期間中いつでも20%還元の「Payトク」キャンペーンスタート!』(LINE)『【LINE Pay】LINE Pay史上最大の還元祭「春の超Payトク祭」を開催 毎回20%分還元+もらえるくじ(最大2,000円相当) のWキャンペーン』(LINE)

[5] 『LINE Pay株式会社 第5期決算公告』(LINE)

[6] 『2018年12月期 決算短信[IFRS](連結)』(LINE)

[7] 『1日で88億円を消化、300億円キャンペーンに込めるLINE Payの深謀』(日経ビジネス電子版)p.2

[8] 『LINE史上最大の還元祭「祝!令和 全員にあげちゃう300億円祭」を開催』(LINE)

泉田良輔 (いずみだ りょうすけ)
 テクノロジーアナリスト/GFリサーチ 代表。個人投資家のための金融経済メディアLongine(ロンジン)編集長、および株1(カブワン)LIMO(リーモ)の監修も務める。それ以前はフィデリティ投信・調査部にて日本のテクノロジーセクターの証券アナリスト、日本生命・国際投資部では外国株式運用のファンドマネジャーとして従事。慶応義塾大学大学院卒。著書に『銀行はこれからどうなるのか』『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』。東京工業大学大学院非常勤講師。産業技術大学院大学講師。

キーワード:経営、企画、技術、製造、経営層、営業、管理職、プレーヤー、経営、イノベーション、国際情勢

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