泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

PayPayが火を付けたキャッシュレス決済戦争が向かう未来(上) テクノロジーアナリスト/GFリサーチ 代表 泉田良輔

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コミュニケーションアプリ大手LINEは「LINE Pay」を強化

 ソフトバンクグループが力を入れるPayPayのライバルとして注目しておきたいのは、コミュニケーションアプリ大手のLINE(ライン)が、関連会社LINE Payを通じて提供する「LINE Pay」というサービスである。

 LINE Payはスマホを活用した送金・決済サービスで2014年12月より提供が開始された。コミュニケーションアプリLINEの一つの機能になっており、銀行の口座振替やコンビニでの入金といった方法でチャージするキャッシュレス決済サービスだ。その後、2017年1月にはスマホコード決済機能を追加。コンビニエンスストアのローソンでの対応を手始めに、スマホコード決済が対応可能な会社・店舗を順次増やしながら、2019年4月にはLINEアプリとは独立したスマホコード決済アプリの提供を開始している。

 コミュニケーションアプリとしてのLINEは2019年第1四半期の月間アクティブユーザー(MAU)がグローバルで1億6400万人、国内で同8000万人に及ぶなど幅広い人気がある。LINE PayはそのLINEアプリの機能の一つであることを強みに利用を拡大。グローバル決済高が2018年には1兆円を超えるほどになった。ちなみにLINE PayのグローバルなMAUは2019年第1四半期の時点で430万人となっている。

 しかし、PayPayが展開した100億円規模の大型キャンペーンにより、スマホを活用したキャッシュレス決済サービスにおける利用拡大策の主流は、残高への還元に移ったといえる。LINE Payもその流れは無視できず、2018年12月には「Payトク」というキャンペーンを、2019年3月には「春の超Payトク祭」というキャンペーンを実施。それぞれについてキャンペーン期間中のスマホコード決済について利用額の20%を還元している[4]。

 こうしたキャッシュレス決済サービス事業者間の大型キャンペーンによる激しい利用拡大戦争は、事業者の決算を「血みどろ」にした。LINE Pay株式会社の決算公告を見ると、2018年12月期の売上高44.5億円に対して、営業損失として実に53.3億円を計上していることがわかる[5]。

 LINE Payというキャッシュレス決済サービスへの戦略的な投資は、親会社LINEの収益を圧迫するほどにもなっている。2019年12月期の第1四半期の売上高は553億円と対前年同期比で14%増だが、営業損失は78.9億円と前年同期の12.5億円から大きく悪化した[6]。

 それでもLINEはさらなる大型キャンペーンを続ける。2019年5月20日からの「祝!令和 全員にあげちゃう300億円祭」では、指定した期間中に、チャージなしで1000円相当の「LINE Pay ボーナス」という用途制限付きの残高を、利用者のLINEアプリの「友だち」へ送信することができる。「開始から約1日で880万人以上の方が送付しており、5月21日16時時点で既に約88億円相当分が消化された」と報道された[7][8]。1人当たり1000円の費用で880万人分の資金移動を施すことが実現できたと推測される。その通りなら金融機関も含めLINE Payの競合企業も驚く費用の安さだろう。今後の同社による正式な発表に期待がかかる。

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