泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

PayPayが火を付けたキャッシュレス決済戦争が向かう未来(上) テクノロジーアナリスト/GFリサーチ 代表 泉田良輔

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100億円キャンペーンを実施した「PayPay」で火が付いた

 日本のキャッシュレス化の流れを加速したのはスマホコード決済サービス「PayPay(ペイペイ)」であったと将来振り返られることがあるかもしれない。PayPayは、それほど大きな衝撃をもたらした。

 PayPayはスマホアプリが2018年10月にリリースされてサービスが始まった。ヤフーの持分法子会社でソフトバンクグループの電子決済プラットフォーム企業と位置づけることができるPayPay株式会社が、会社名と同じPayPayという名前でスマホコード決済サービスを提供している。

 2018年12月には大型の利用促進策第1弾として「100億円あげちゃうキャンペーン」がスタート。開始直後からツイッターなどのSNS(交流サイト)上で「抽選で当たり、XXX円分が戻ってきた」というコメントを目にした方も多かっただろう。買い物をすると支払い額の20%がPayPayの残高として戻る(「還元」と呼ぶ)ほか、10回に1回の確率で全額(10万円相当まで)が還元された。そのため、当選を期待して高額な家電製品を購入したユーザーもいたようだ。また、アカウントを新規登録すると全員に500円の残高がプレゼントされたこともあり、とりあえずPayPayアプリをダウンロードした方も多いだろう。

 PayPayは2019年2月にも、大型の利用促進策である「第2弾100億円キャンペーン」を実施し、サービス登録者を急速に拡大させた。ソフトバンクは2019年5月の決算説明会で5月4日時点の累計登録者数が700万人を突破したと発表している[1]。

 累計登録者数700万人のうち、600万人はサービス開始6カ月で獲得したという[2]。広告・宣伝などの費用が別途かかっているだろうが、仮に2回にわたる大型利用促進策の還元額200億円だけで600万人を獲得したとすれば、ユーザー一人当たりの獲得費用は約3300円になる。PayPayのライバルは、ユーザー一人当たりの獲得費用がこの水準を超えるようなら、今後の競争に生き残れないだろう。

 一方、大型利用促進策などによってPayPayという会社から流出したキャッシュも莫大だった。5月8日にPayPayは第三者割当増資による増資を発表。同社はグループ統括会社のソフトバンクグループから460億円の追加出資を5月以降に受け入れ、資本金を920億円にするとした[3]。実施後、PayPayの株主構成はソフトバンクグループが50%、ヤフーが25%、ソフトバンクが25%という比率になる。

 PayPayが今後もこれまでと同様の大型利用促進策を行うかどうかは今後のライバルの状況および打ち手次第だろうが、前述の増資は「これまでと同規模のキャンペーンをまた打つことができるぞ」というライバルへのメッセージも含まれているであろう。

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