「令和」の国際企業戦略を分析する

アップル×ファーウェイ 次のステージへ 田中道昭・立教大学ビジネススクール教授に聞く(3)

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ファーウェイの社員株主、輪番CEO、「憲法」

 一方田中教授は「ファーウェイも主力製品はスマホではなく、売り上げの5割を通信業者向けネットワーク事業で占める世界1位の移動通信設備メーカーとみるべきだ」。その技術製品を支えているのが売り上げの1割以上を継続して研究開発費に充てている点だ。15年時点でファーウェイが利用したアップルの特許件数98件に対しアップルが用いたファーウェイの特許件数は769件に上るという。

 ファーウェイの特徴は、ほかの国際的大企業にない独自の企業文化だ。(1)独自の社員持ち株制度を敷いて創業以来未上場であること(2)輪番CEO(経営最高責任者)制度で副会長3人が半年の任期で順番に務める(3)64条から成るファーウェイ憲法の制定――。田中教授は「社員のモチベーションを上げて組織力の強化につながっている」と分析する。

 こうした点はファーウェイのレン・ジンフェイ(任正非)創業者の性格によるところが大きそうだ。もともと人民解放軍の基建工程兵部隊に所属したエンジニアだが、軍の人員削減に伴い国有企業に転属。さらに大きなプロジェクトに失敗して退社、同僚ら5人とファーウェイを立ち上げた。毛沢東の理論に倣ったかのように、まず都市周辺部から市場を開拓し、次に都市のシェア獲得、中国国内、途上国、欧州市場と拡大してきた。かつて社内誌に「ファーウェイの冬」という寄稿文を掲載し「失敗は必ずやってくる」と警鐘も鳴らしていた。

 ファーウェイ基本法には「世界一流の設備サプライヤーになるために情報サービス業には永久に参入しない」とうたってあるという。田中教授は「GAFAなどが様々な新規分野を開拓するのに対しファーウェイはあえて限られた立ち位置で勝負しようとしている」と分析する。

 米政府の制裁による「ファーウェイ・ショック」は長引くとの声が少なくない。「当面は中国政府の全面支援を受けながらグレーターチャイナ(中華圏)でサプライチェーンの再構築を急ぐだろう」と田中教授。さらに「皮肉にもグーグルのOSが使えなくなる可能性は、ファーウェイをOSを含めたプラットフォーマーへと飛躍させる可能性を生じさせている」としている。

 アップルとファーウェイを田中教授が開発した「5ファクターメソッド」で分析した。孫子の兵法をアレンジして、『道・天・地・将・法』の要素に分類し、現代マネジメントの視点から再構築したものだ。アップルが全般的に少しリードしている中でファーウェイ優位とされるのが市場動向や業界構造を示す「天」だ。田中教授はファーウェイがデジタルデバイド(情報格差)の解消に取り組んでいることを指摘する。「情報格差解消のためのデジタル変革が進むときにファーウェイが必要なインフラやデバイスを保持していることは大変な強みだ」としている。

(松本治人)


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