村上芽氏が著した書籍『少子化する世界』(日本経済新聞出版社)から4回にわたり、少子化における世界の現状について報告する連載。最終回ではイギリスを取り上げる。同国は少子化の問題意識が比較的高くなさそうな英語圏代表であり、また古くからの階級社会がいまだに残るなかで、子育ての面では「保育の質」の確保への取り組みに特徴がある。
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コーホートで出生率をみる
2017年6月時点でのイギリス全体の人口は6604万人で、イングランド及びウェールズ*1が88.9%、スコットランド8.2%、北アイルランドが2.8%という内訳だった。全体の人口増加率は0.6%で、2007年との比較では7.7%増加した。39.2万人の増加の内訳は、41%が自然増、59%が社会増だった。移民が減ったこともあって人口増加率は小幅にとどまった。移民が多かったのはルーマニア出身者5万人のほか、中国、インド、フランス、ポーランドだった*2。
*1 イギリスの統計資料では、イギリス全体のデータと、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドが別になっているデータがある。出生率関連データや乳幼児・子ども期の政策については「イングランド及びウェールズ」が1単位となっていることと、同2国で全体の90%近い人口をカバーしていることから、ここではイギリスを主に「イングランド及びウェールズ」として扱う
*2 イギリス国家統計局。出所:Population estimates for UK, England and Wales, Scotland and Northern Ireland: mid-2017
イギリスの期間合計特殊出生率からみていこう(図表4―1)。1938年から2017年まで、80年分ものデータを統計局から一括取得することができる。これをみると、第二次世界大戦後と、1964年の2.93をピークとした2つの山があるところが目につく。
1960年代後半から70年代までは急減し、その後は変化としては小さく、高かったのが2010年の1.94で、直近の2017年は1.76である。ここ最近は5年連続して減少している。ただ、戦後から一貫して1.5までは下がらず、超低出生率には至らない底堅さがある。