長島聡の「和ノベーションで行こう!」

消耗品の買い物をIoTやAIで究極まで便利にしたい 第26回 スマートショッピング 共同創業者・代表取締役 林英俊

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パートナーやお客様に教えてもらっている

長島 御社は外部のパートナーと様々な取り組みをされています。

 外部のパートナーにはいつも刺激を受けています。スマートマットは、お客様が飲食店、工場、病院、介護施設、オフィス、物流センターなど幅広いため、パートナーのほうがお客様のことをよくご存じです。お客様の課題発掘や、そのソリューションについては、パートナーやお客様からいろいろ教えてもらっているという感じです。

長島 それはすごいですよね。

 例えば、スマートマットをゴミ箱の下に敷いて使う方法があります。在庫が減ったらアラートを出して発注するという利用方法とは逆で、一定量を超したらゴミ箱からゴミを回収します。パートナーがお客様の悩みを受けて考え出した利用方法です。

長島 一方、パートナーとの収益配分についてうまく折り合いがつかなくなるというスタートアップ企業の話しもよく聞きます。この辺りはどう対応されていますか。

 弊社がパートナーと組むときは「黒子」に徹します。要は、BtoB向けサービスはパートナーのブランドで提供いただき、どれくらいの付加価値をつけるか、ほかのサービスとどう組み合わせるかについてはパートナーに任せます。広い業種のお客様を対象にしているため、弊社のブランドより、パートナーのブランドのほう強いと考えています。

長島 パートナーを前面に出すビジネスのほうが、市場が10倍、100倍に増えるのだから、双方にとってメリットがあるという考えですね。

 まさにそうです。経営資源が潤沢ではないスタートアップ企業でもあり、直販も当然やっていますが、その力には限度があります。一方、パートナーは大きな営業部隊を抱えるとともに、最適なソリューションを考える頭脳を持っています。もちろん、企業と企業が一緒に組むには、時間がかかるのですが、最後はより大きな成果が出せると思っています。

長島 うまくいく協業にはどれぐらいの期間がかかりますか。

 いろいろやってみてわかりましたが、1~2年はかかります。かなり前からコンタクトを取ったところが今、パートナーとして花開いているという感じでしょうか。一緒に市場を拓こうと合意するまでは数週間から1カ月と早いのですが、そこから具体的にビジネスを始めて、最初のお客様を獲得するまでに1~2年かかります。

長島 うまくいくパートナーといかないパートナーの違いは何でしょうか。

 弊社も試行錯誤して本当に魔法の杖を探していますが、金額面での折り合いというより、人的な面でどれくらい一緒に協力できるかによるという気がしています。パートナーの営業の頑張りに対して、自分達が比例して頑張るという感じを持てるところとはうまくいくようです。逆にパートナーは、弊社が一緒に頑張るから、頑張って売ってくれるのでしょう。

長島 パートナーに対してあの手この手で思いを伝えるところがポイントなのでしょう。

 営業資料をパートナーとシェアすれば済むという形では協業は決して進展しなくて、トレーニングや営業への同行を手厚く実施したところがビジネスの花を開かせようとしてくれます。私も魔法の杖を探し始めて半年ぐらいになるんですが、非常に地道な方法しかないのかなと最近は思っています。

今、着目しているデータの活用方法

長島 データ活用についてのお話しがさきほど少しありましたが、今、着目している活用方法についてぜひうかがえますか。

 弊社は消費者の購買履歴データや企業の在庫履歴データを細かく取得していますが、これはほかに類似のものがありません。例えば、弊社の在庫データはリアルタイムに棚卸しをした実在庫の履歴データです。

長島 販売時点情報管理(POS)の実売データをもとに計算した理論在庫の履歴をためている会社はありますが、実在庫データの履歴はあまりないでしょうね。

 また、私もEC事業者で購買履歴データを分析したときに思ったのは、購買を決断するタイミングに関するデータが大事なことです。例えば洗剤が本当は何曜日によく減るのか、どれくらいの頻度で補充しているのかを知るには、これまで一般家庭をカメラで観察するといった調査をするしかないと思っていました。定期購入サービスの設定でお客様が迷うという話しをさきほどしたように、アンケートで聞いてもそれはわかりません。しかし弊社は家庭を観察しなくてもわかるテクノロジーを持っています。

 データを活用したビジネスへ本格的に取り組もうと、弊社はより高度な仕組みの開発に取り組んでいます。

 例えば、在庫管理では適正在庫や安全在庫をどのような水準にするのがよいかがよく問題になります。もちろん、それらを理論的に計算する数式はありますが、弊社のテクノロジーを使えばリアルタイムの実在庫データをもとに最適化なものを決定できます。AIを使って、あなたの減り方では30%まで在庫が減っても大丈夫といった指示を出したり、適正在庫の水準を自動変更したりするといったことが可能です。

 また、事例もあるシンプルな使い方としては「異常」の発見があります。多くのお客様は、在庫の消費スピードを測ったことがありません。しかしスマートマットで消費スピードを測定しておけば、在庫が通常時に比べて異常に減ったとき、盗難の発生を疑うことができます。工場であればタンクから液体が漏れているかどうかが判断できるでしょう。逆に通常の消費スピードに比べて在庫が減らないときにアラートを出すこともできます。例えば病院でメスを洗うときに使う滅菌洗浄液は、あるペースで減らないとメスがきちんと洗われていない可能性が出てくるため、定期的に容器の目盛りを目でみて残量を測定していますが、スマートマットを活用すれば自動化できます。

 さらに、スマートマットでは商品を載せたときの日付を記録しています。例えばこのタマネギの箱は載せて3日経っているので、賞味期限はいつになるといったアラートが出せるので、これを応用して外食チェーンと一緒に食材の在庫管理を行う仕組みを開発しているところです。

長島 今の話はアドテクとは違う新たなデータテクノロジーですよね。

 スマートマットで取得した実在庫データが非常に強いと感じているのは、画面のボタンを何回クリックしたという間接的なものではなく、実際に消費している状態が見えることです。そのため、簡単な統計処理だけで発見ができますし、AIが学習したら、さらにすごい使い方ができると思います。結局、AIに何か学習させようとしたとき、そもそもデータをきれいにするところや、必要なデータが揃ってない部分で悩むのですが、スマートマットでは最初からきれいなデータが集まり、それもお客様が喜んでためてくれるのです。

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