長島聡の「和ノベーションで行こう!」

消耗品の買い物をIoTやAIで究極まで便利にしたい 第26回 スマートショッピング 共同創業者・代表取締役 林英俊

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長島 スマートマットの上に商品を積むと在庫量がわかるわけですね。

 スマートマットは電池で駆動し、重量データは無線通信で送るため、配線はいっさい必要ありません。A3サイズのマットは100キロまで、A4サイズのマットは30キロまで対応しています。マットを複数枚活用すればさらに大きな重量まで測定できます。A3サイズのマット4枚を物流パレットの四隅に配置すれば400キロまで測定可能です。

長島 マットの枚数をさらに増やせば、より重量のある商品の在庫も管理できますね。

 1トンの鉄板を10枚のマットを使って測定している例もあります。

長島 マットで測定した商品の重量はクラウドへ飛び、そのデータをもとに自動発注をして、商品が届いたら、またマットの上に商品を置くまでが一つのサイクルで、最初のサイクルでチューニングも終わるみたいな、利用イメージでしょうか。

 利用者は最初に、マットを無線LANネットワークへ接続するとともに、商品在庫を個数として定義するのか、重量のパーセンテージとして定義するのかといった設定を行いますが、それが終わればすべて自動です。

長島 人工知能(AI)で適正在庫量を学習することもできますか?

 それについては開発中です。

長島 実現すれば、企業は在庫管理の手間がほぼなくなりますね。

 はい。われわれは、IoTビジネスの本質は、軽いハードウエアと賢いソフトウエアを使ったデータビジネスだと考えています。そのため、消耗品の購買データは利用者が個別に最適化などで使うだけでなく、統計的にデータを活用することで付加価値を出すことができると創業時から考えてきました。そのデータ活用についてもビジネスを始めています。

定期購入サービスを超えるものを「発明」したい

長島 二つのビジネスを立ち上げた経緯やご苦労されたところについてぜひお聞きしたいのですが。

 起業して、まずBtoC向けのサービスを開発しました。出発点には、EC事業者で消費財定期購入サービスの責任者だったときの経験があります。消費財の定期購入サービスは便利そうに見えて、大きな課題がありました。定期購入するときには商品の配送頻度を指定するのですが、洗剤の場合、2カ月にしますか?3カ月にしますか?

長島 すぐには、わかりませんよね。

 45日ごとの配送にしてほしいときも、1カ月にするべきか、2カ月にするべきかで迷います。

長島 確かに、中間の配送頻度がありません。

 さらに夏と冬のような季節などで洗剤の使用量が変わるため、それを反映して配送頻度を指定する必要があります。

長島 私が炭酸水を定期購入したときは、1カ月のだいたいの使用量を見積もり、それより少ない量を1カ月に1回配送する設定にしていました。それでも1本当たりの値段は安くなります。

 しかし、それではEC事業者が消費者を囲い込むための仕組みにとどまってしまいます。では、本当に消費者のためになる消耗品の購入方法とはどんなサービスだろうかと考え、その結果、商品の値段が最も安く、気の利いたおすすめの商品を提案するBtoC向けのサービスへたどり着きました。複数のECサイトについて商品の価格を比較し、購入履歴をもとに、おすすめの商品を提案できるようにするまでに起業から2~3年かかりました。

 今年は、そのサービスに購買代行の機能を追加しましたが、その開発でも紆余曲折がありました。当初はお客様の購買履歴データをもとに、ソフトウエアだけで次の購買タイミングを予測できると考えたのですが、正しくありませんでした。例えば、6月1日と8月1日に炭酸水を買ったら、次は10月1日に炭酸水を買うといった予測の仕組みを検討したのですが、お客様が別のところで炭酸水を買うなどすれば消費量は大きく変化します。また、いくつかの商品について消費量の平均値を調べましたが、一人暮らしの人と、家族で住んでいる人では消費量が数倍違うので、行き詰まりました。

 そうなると、実際に一人ひとり消費量を計測するしかありません。そこで、測定方法として、カメラ、RFID(無線自動識別)タグ、重量計を検討し、最も直感的で応用範囲が広い重量計を採用することにし、それがスマートマットになりました。

長島 カメラは、見られている感が満載でイマイチですよね。

 特にカメラは、置きたくないという方が多かったですね。スマートマットも当初は一般家庭向けとして開発しました。ただし、テストマーケティングをしたところ、一般家庭では、有料のサービスとしてお金をいただけそうにないとわかって、BtoB向けに位置づけを変更しています。企業のお客様には「すぐ持って来てほしい」と言われるほど大きなニーズがありました。

長島 一般家庭でも役立ちそうですが。

 BtoCとBtoBの大きな違いは、商品の購入頻度と購入量です。BtoBでは多くの消耗品を週1回以上の頻度で購入しています。飲食店であれば、毎日のように飲料を発注していますが、一般家庭では月1回、よく飲む人でも月2回注文する程度です。

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