少子化する世界

「小さな奇跡」と評されたドイツ、裏側に外国人出生率の急上昇 日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネジャー 村上 芽

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 1990年代に入ると、イタリア、日本、韓国、ロシアなどが1.3~1.4付近の最低グループを形成し、2002年からは韓国が最低となったため、単独最下位の地位は返上したものの、際立って上昇するということはなかった。

 そのドイツの出生率が2016年には1.59に上昇し、ドイツとしては1970年代前半の水準にまで戻した。生まれた子の数でみても79万2131人と、5年連続の増加で1996年以来およそ20年ぶりの高水準となり、国内すべての州で増加したという*2。このことは、同国のメディアでは「小さな奇跡」とさえ評された。この奇跡の裏側にも、外国人の出生率の急上昇が存在している。

*2 ドイツ連邦統計局 2018年3月28日発表資料。

 過去25年分の出生率の推移(図表3―2)をみても、外国人の方が一貫してドイツ人よりも高い。しかし、1990年代から2000年代にかけてと、2010年以降はグラフの形が異なっている。ドイツ人の出生率は、1995年に1.2で底を打ったのち、やや上昇して横ばいになり、最近3年では1.5近くまで少しずつではあるが戻してきている。それに対し、外国人の方は、2009年までの約20年間は大きく減少した。1991年には2.0を上回っていたのが、2009年には1.57まで低下したのだ。それが、2011年に急上昇して、2016年には2.28と、一気に2.0を超した。この結果が、2016年のドイツ全体における出生率の跳ね上がりにつながった。2010年以前と比べ、出生率のもともと高い国出身の女性がドイツで子どもを産むケースが増えてきていることを示している。

新生児の母の4人に1人が外国人

 2016年に生まれた新生児のうち18万4660人、全体の23%の母が外国人だった。2011年以降に生まれた子どもの内訳をみると、この比率は17%程度で推移していたが、2015年に20%を超え、2016年はさらに大きく伸びた。ドイツでも母親の年齢の中心は30代であるが、その30代の人数を移民が約10%押し上げているというデータもある。州や自治体によってバラツキがあることを考えると、小さい赤ちゃんとお母さんは外国人ばかりにみえる地域もあるだろう。ここで確認しておきたいのは、母親がドイツ人という子も増えていることだ。これは全体の人口の増減とは異なる傾向である。

 ドイツ連邦統計局では、子どもの国籍別人数も発表している。外国人の子ども全体でみると、主には欧州諸国だが、最近シェアや伸びの大きい10カ国分の内訳によると、図表3―4のとおり、2016年までの6年間、一貫して単独で最も多いのはトルコである。2015年までは、次に多いグループはポーランド、ルーマニア、コソボといった東欧諸国だったが、2016年に急上昇したのがシリアである。東欧諸国の絶対数も伸びてはいるものの、こうした目立った状況も、ドイツの難民受け入れに対する人々の考え方に影響を及ぼしていないとはいえないだろう。

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