変革のカギを握る「コラボレーション主導型CMO」とは

日本のマーケティング 進化を妨げるのは何か アクセンチュア インタラクティブ マネジング・ディレクター 望月 良太

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 二つ目は「事業部単位の縦割りによる個別最適化の弊害」です。顧客ならびにその行動をトラッキングできるデジタルマーケティングの世界では本来、認知獲得から初回購買を経てリピートや推奨までに至るプロセスを総合して、つまり「フルファネル」でのゴール達成を考えるべきです。ところが各事業部が個別にマーケティングを実践する場合、個別のKPI(重要業績評価指標)やKGI(重要目標達成指標)を設定し、その完遂に終始しがちです。

 例えば、新規顧客の「獲得」がミッションの部門では、一人でも多くの認知や顧客の獲得、初回購買を実現することが目標となりますが、CRM(顧客関係管理)部門では購入回数や長期にわたる継続購買がKPIとなるでしょう。大量の新規顧客を獲得し売上に貢献できれば部門としては大成功となりますが、もしこれらの新規顧客が2回目以降の購買に全く進まない場合、CRM部門としては大失敗ということになります。

 ファネルをまたいだ戦略・戦術を全部門横断で導入できていれば、新規顧客として獲得すべき層は、「将来的に継続購買の見込める属性のユーザー」となりますが、その場合は新規獲得のハードルが高くなりROI(費用対効果)は下がります。全社の戦略としてそれが許容されていればよいですが、個別部門ごとにKPIが設定されている場合、とにかく自部門のKPI達成に終始してしまい、全体最適なゴール達成に結びつかなくなるわけです。

 構造的な問題の三つ目は、「データ整備とシステム対応の遅れ」です。デジタルマーケティングにおいては、データこそが基軸通貨とも言えるほど重要な役割を果たしますが、せっかく保持している顧客データも、部署間の壁によりサイロ化(孤立化)しがちです。本来、データは全社で統合管理するとともに外部データと連携することでますます価値を生むべきですが、そうした利活用が不十分なケースが見受けられます。

 そもそも顧客データは、基幹系業務システムに格納されていることが多いのですが、長年の改修を経てシステムがスパゲッティーのように複雑に絡み合ったアーキテクチャー(構造)となり、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を作ってデータを抽出することが困難な場合が珍しくありません。その課題解決に向け、システムを刷新しようにも、ウォーターフォール開発を重視することによるスピードの遅さや企業内の多重承認プロセスが、開発の阻害要因となるケースを多く見てきました。

 こうした課題や構造的な問題を踏まえると、日本においてCMOの役割はどう再定義されるべきでしょうか?次回は、その問いについて考えみようと思います。

望月 良太(もちづき・りょうた)
アクセンチュア株式会社 デジタル コンサルティング本部 アクセンチュア インタラクティブ マーケティング サービス グループ統括マネジング・ディレクター
アクセンチュア インタラクティブで、マーケティング領域のビジネスを統括。チャネルや部門で断絶されるマーケティング活動を、経営のKGIとつなげお客様のビジネスパフォーマンス向上に直接寄与する本質的な総合マーケティング支援サービス「Unified Marketing&Sales」を提供している。デジタルマーケティング活動に関わる戦略立案から施策実行、組織変革、プロセス設計、プラットフォーム構築までを一貫して支援し、コラボレーション主導型CMOの推進に取り組んでいる。

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