変革のカギを握る「コラボレーション主導型CMO」とは

日本のマーケティング 進化を妨げるのは何か アクセンチュア インタラクティブ マネジング・ディレクター 望月 良太

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生活者とプラットフォームの変化に対応するにはマーケティング志向が必須

 しかし今後は、マーケティングドリブン(マーケティング起点)の発想がこれまで以上に必要になると考えられます。まず生活者側に大きな変化が起きています。これまで均質的な傾向にあった消費・購買ニーズは、細分化の一途をたどっています。もはや性別・年代・地域などのデモグラフィック属性で括っても効果は期待できず、多様化した個人のニーズ、消費の価値観に沿って細かく丁寧に対応しないと購買には至りません。よりカスタマイズ化・パーソナライズ化された商品などが求められる傾向にあります。

 生活者側の変化への対応を可能にし、かつ購買を促しているのがメディア・プラットフォーム側の進化です。テレビ・新聞・雑誌・ラジオの4マス媒体に加えて、デジタルの各種メディアやソーシャルプラットフォームが台頭しています。そこでは膨大なコンテンツが、限りなくリアルタイムに生み出されており、自分が知りたい情報を、いつでも好きな時に、場所を問わず検索し深堀できる環境が生まれました。

 購買もオンライン・オフラインをまたいだオムニチャネルが一般化しており、商品の良し悪しだけではなく、決済手段や配送の受け取り方法といった購買に付随するサービスも、消費行動を左右する大きな要因となっています。今の顧客が生きる情報大爆発時代には、もはや良いものを作るだけでは売れない状況なのです。

マーケティング環境の変化に対応するために必要な企業側の課題

 こうした変化に伴い、マーケティングに関する業務は次第に複雑化しています。これまでマスメディアだけを考えていればよかったところに、デジタルメディアの活用も検討する必要が生じ、作業量も単純に増加しました。すると、主力でない商品には宣伝広告部の手が回らなくなります。特に、手間がかかるデジタル領域のコミュニケーションは各事業部へ権限が委譲され、各事業部が宣伝広告部を通さずに、広告代理店へ直接発注したり、コンサルティング会社やSIer(システムインテグレーター)、デジタルソリューションを提供するプラットフォーマーに直接依頼したりするケースが増えています。

 筆者が10年間の広告代理店勤務からアクセンチュアに復帰して一番驚いたことは、10年前には寄せられなかったRFP(提案依頼書)が大幅に増えていたことです。これまでは広告代理店が対応するような案件を、コンサルティング会社も受注・対応しているのが現状です。

デジタルマーケティングが進展しない構造的な問題

 一方で各事業部は、デジタルマーケティングを必ずしも上手く推進できているわけではありません。デジタルマーケティングの普及が進まない日本企業には、三つの構造的な問題が存在していると考えます。

 一つ目は「デジタル人材不足と組織の未整備の問題」です。一般的な日本企業では、ジョブローテーションによるジェネラリスト育成志向が強く、デジタルやデジタルマーケティングのような専門スキルを持つ人材を育成しにくいという傾向があります。ある企業から「デジタルマーケティングの部署にはいつも新人しかいない」という悩みを聞いたこともあります。ジョブローテーションを基本とするため、せっかく人材が育っても、数年経つと別の部署に移ってしまい、また新人が入ってくるという繰り返しになっているということです。その結果、広告代理店やコンサルティング会社といった外部のパートナー企業に業務を一任するケースが増えていますが、それでも問題はあります。

 デジタルマーケティングは、高度な専門性と豊富な経験が求められる上に進化のスピードが速いため、専任者でも追い付くのが大変な世界です。企業側の担当者の知識やスキルが浅いと、施策をパートナー企業に一任したものの、出てきたアウトプットを正しく評価できなかったり、パートナー企業をコントロールできず、何でも言いなりになってしまったりするという課題も多く聞きます。

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