少子化する世界

少子化対策先進国フランスで出生率が3年連続低下した理由 日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネジャー 村上 芽

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 時系列でみると、フランスのスコアは上がってきている。なかでも、政治と経済の平等化が進んできていることが分かる。特に2017年のスコアについては、世界全体のなかでも目立つ進展をみせており、政治面で国会議員が増えたことが特筆されている*7。パートタイム労働者に占める女性の割合は75%だが、10年前よりは5ポイント下がっているところにもその傾向は表れているだろう。

*7 世界経済フォーラム[2017]

 フランスでの2006年から2017年までの11年間の出生率の変化と比較すると、出生率は2010年にピークとなりその後微減となっているが、政治・経済への参画が進んだわりには、出生率があまり下がっていないとみてもよいだろう。減っているのは20代の出産であることから、産むのを遅らせる代わりにしっかりとキャリアを積んだり昇進したりしていることが想像できる。フランスの女性の経済参画への余地がさらにあるとみれば、「少なくとも20代では子どもよりも勉強や仕事を優先したい」という傾向はなおも続く可能性がある。

フランスの女性が子どもを産む5つの条件

 女性がキャリアアップを望むとしても、その背景にはさらに何があるだろうか。

 フランスの女性が子どもを産むための条件と考えられていることは何か。フランスの国立人口学研究所(Institut national d'études démographiques:Ined)による指摘を総合すれば、以下の5点を挙げることができる。

(1)父親として納得できる、決まったパートナーを見つけること

(2)子どもを持つことについて、パートナーと合意に至ること

(3)自らの学業を終えること

(4)自らの仕事の安定性を最低限は確保すること

(5)十分に資源があること

 1つ目の「納得できる決まったパートナー」については、フランスでは婚外子の比率が6割に近いため、「結婚相手を見つける」ではなく「パートナーを見つける」という表現になっている。

 2つ目の「子どもを持つことの合意」については、子どもを持ちたいという意欲(希望)について男女間に差があることに触れておきたい。OECDの調査によると、フランスの場合、2011年の希望子ども人数(15~64歳が回答)は男性が2.24人、女性が2.52人と、女性の回答の方が0.3人近く多い*8。同調査対象国30カ国中、21カ国で女性の方が子どもを多く希望しているが、男女差が大きいのは上からオランダ、フランス、ベルギーだった。フランスの女性の希望数は、アイルランド、キプロス、デンマークに次いで4番目に多い。

*8 OECDファミリーデータベース“SF2.2 Ideal and actual number of children”. 出所:http://www.oecd.org/els/family/database.htm

 3つ目の「自らの学業を終えること」については、フランスの女性の学歴は、男女差でみると先のジェンダー・ギャップ指数のように差はない。ただし先進国に共通して、専攻する分野については男女差がある。

 4つ目の「仕事の安定性」と言ったとき、一般には無期限の仕事に就くことを指し、「最低限」としているのは、もともと子どものいる女性の働き方として中心的な、無期限雇用のパートタイムを指していると考えられる。学校を卒業してフルタイムで無期限の仕事に就けば(すなわち正社員としての仕事に就けば)、のちに子どもを持った際にパートタイムに移行するということも、自分の意思を反映させる選択肢として柔軟に考えやすい。なお、1人目を産んだあとはフルタイムとして復帰する人が半分程度、3人目からは同4分の1程度という分析もある。

(つづく)

村上 芽 著 『少子化する世界(日経プレミアシリーズ)』(日本経済新聞出版社、2019年)、「第2章 フランス 優等生であり続けるのか」から
村上 芽(むらかみ・めぐむ)
京都大学法学部卒業後、日本興業銀行(現・みずほ銀行)を経て2003年より株式会社日本総合研究所。現在、創発戦略センターシニアマネジャー。専門分野は気候変動と金融、SDGs、子どもの参加論。共著に『ビジネスパーソンのためのSDGの教科書』『投資家と企業のためのESG読本』(ともに日経BP社)、『進化する金融機関の環境リスク戦略』(金融財政事情研究会)、『地球温暖化で伸びるビジネス』(東洋経済新報社)などがある。

キーワード:経営層、管理職、プレーヤー、経営、営業、国際情勢

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