少子化する世界

少子化対策先進国フランスで出生率が3年連続低下した理由 日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネジャー 村上 芽

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 いずれにしても、フランスの出生率は日本の1.43と比較して0.45も大きい。5人組の女性に換算すると、子どもが約7.1人なのが日本、約9.4人なのがフランスということになる。3年連続で減少したといっても、この水準のことをいっているわけである。

 出生率を年齢階層別にみると、20代前半まで(15~24歳)0.25、20代後半から30代前半まで(25~34歳)1.19、30代後半から40代(35~49歳)0.4となっている。全体の出生率が最高の2.03だった2010年と比較すると、全体では93%に減っているのだが、15~24歳が78%、25~34歳が92%、35~49歳は110%と、若い世代ほど落ち込みが大きい。20代から産み始めるよりも、30歳前後から産み始める傾向が強まり、全体として、晩産化が進んでいることがはっきりと出る結果となった。

 初産の平均年齢は1970年前後には24歳だったのが、2010年時点で28.1歳になっている*3。いかに経済的な子育て支援策や母親の育児負担軽減策が充実していても、1人目を産む時期が遅くなれば、どうしても2人目、3人目に進みにくくなるのは洋の東西を問わない。産み始めが遅くなると生涯に持つ子どもの数が減ってしまうのは、なかなか避けられない。

*3 Ined [2017]

増える高齢出産の本音

 フランスの人口に関するデータを統括する国立統計経済研究所(Institut national de la statistique et des études économiques:Insee)によると2015年時点で新生児の5%の母親が40代で、初産の高年齢化も続いている*4。平均出産年齢は2017年に30.7歳と、1977年時点の26.5歳から一貫して高くなっている。

*4 Insee INSEE Focus No.64, 2016年9月29日発表。出所:https://www.insee.fr/en/statistiques/2593184

 若い世代ほど子どもを産まなくなっているという傾向の背景には何があるのか。この原因については複数の説がある。1つは、2015年に子どものいる家庭向け現金給付が一部カットされたことを皮切りに、中間層が負担をより大きく感じるようになり、低所得層も危機感を強めていったとする、経済的支援策の後退をきっかけとするものだ。若い世代は比較的低所得なので、経済的負担に敏感であるという見方に基づく。

 他方で、その影響は限定的だとする意見や、女性がより高学歴になり安定的な仕事探しを志向するようになったことが主因だとする見方もある。Inseeの専門家は2016年の数字が出た時点で、「女性が教育を受けて安定的な仕事に就くまで子作りを先送りしている」とメディアにコメントしている*5。

*5 例えば英国インディペンデント紙、2017年1月18日付。出所:http://www.independent.co.uk/news/world/europe/french-birth-rate-hit-lowest-level-40-years-france-young-women-stable-situations-havingchildren-a7533951.html

 フランスといえば、クリスティーヌ・ラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事を象徴に女性の社会進出が進んでいるイメージもあろうが、女性が経済の面で特に活躍しているかというと、それほどではない。

 「世界経済フォーラム」という団体が発表する「ジェンダー・ギャップ指数」という指数がある。これは、経済、教育、健康、政治の側面から男女の格差を指数化し、国別のランキングをつけるものだ。その2017年版*6によると、全世界144カ国を通算したジェンダー・ギャップ指数は0.68である。これは68%まで平等が達成され、32%は不平等が残っていることを意味する。全世界でみて、健康については96%、教育については95%と、ほぼ100%に近く平等になっているものの、経済では58%、政治では23%にとどまっている。いわば、この2つの分野での女性参画度合いで差がつきやすいことになる。

*6 世界経済フォーラム[2017]「ジェンダー・ギャップ指数2017」2017年11 月公表。出所:https://www.weforum.org/reports/the-global-gender-gap-report-2017

 フランスの総合ランキングは、男女格差の小さい方から11位に位置しており、スコアは0.778である。ベスト3とフランス・ドイツ・イギリス、及び日本の順位は図表2―2のとおりとなっている(総合のみカッコ内スコア)。

 どの国でも順位でみるとバラツキがあるが、先に述べたように全体の水準が高い教育と健康についてはわずかな差でも順位に大きく影響する。全体1位のアイスランドでも、健康では0.969ながら114位になってしまう。アイスランドが全体1位になったのには、政治分野の1位が寄与している。スコアは0.750だったが、2位の中米・ニカラグア(0.576)を大きく引き離しており、他の3分野にはみられない突出ぶりとなった。

 フランスでは政治は0.453と、数字としてはパッとしないが、順位でみると9位に食い込んでいる。また、経済では0.683となり、64位にとどまった。

 経済面の平等とは、「労働参加率」「類似業務における賃金格差」「平均収入」「指導的地位に占める比率(議員・上級官吏・管理職の比率)」「専門的職業に占める比率」の5つから測定される。

 フランスにおいてこれら5つのサブ指標のなかで弱いのは、類似業務における賃金格差と、指導的地位に占める比率で、平均を下回っている。女性にパートが多く、管理職が少ないというわけだ。なお経済面の順位(64位)については、注意も必要だ。上位には、アフリカやカリブ海の国々が並んでおり、先進国ではノルウェーが0.816で8位なのが最高である。

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