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もう「昭和」を引きずらない シニアは意識をリセットしよう トレノケート シニア人材教育コンサルタント 田中淳子

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「昭和のほうがよかった」はもはやジョークにもならず

 つい最近も、あるシニアにこんなことを言われた。

 「仕事を教えるって言っても、イライラすることもあるじゃない。でもさ、今って、何か言うと、セクハラ、パワハラ・・・。コンプラ違反の発言だ、って言うでしょう? もう何を言ったらいいんだかわからない。好きなことが言えた昭和のほうがよかったなぁ」

 最後の「昭和のほうがよかった」は、半ばジョークのつもりなのだが、でも、こう言ってしまうこと自体が今風ではない。

 ハラスメントについては、ないに越したことはない。発言や行動がハラスメントと言われてしまうのは、ハラスメントという言葉や考え方が広く共有されるようになったからであり、昭和の時代だって、強い言動はノーだったのだ。ハラスメントという言葉がなかったから、誰かが我慢していただけの話だろう。

 昭和の価値観を引きずっている管理職のことを、私は「昭和上司」と呼んでいる。ある企業の役員との会話中、「“仕事は盗むものだ”とか“根性で頑張れ”といった感覚を持つ“昭和上司”がまだまだいるので、平成の社員は驚くのですよね」などと話したら、「昭和上司...かぁ。それ、面白い表現ですね。今度、ボクも使おう」と笑顔で応じられた。

 昭和どころか、平成も過ぎ、もう令和である。

 シニアは、若い頃刷り込まれた昭和の価値観や考え方、特に、若いころに刷り込まれた働き方の感覚は、いったんリセットし、新しい時代の働き方、仕事観を養うことが必要だ。

 そういう意味では、2010年に亡くなられたがプロレスラーの山本小鉄さんは素晴らしい方だった。

 山本小鉄さんとは、2008年頃、私が通っていた大学(社会人向け講座)でクラスメイトだったのだが、昭和16年(1941年)生まれで、どっぷり昭和に生きてきた方なのに、感覚が新しかった。

 ある時、クラスメイトの一人(女性)が自社の後輩男性について「うちの若手が全然しっかりしていなくて、男なんだから、もっとパワフルにシャキッと働いてと思っちゃう」と愚痴ったところ、小鉄さんはこう言った。

 「○○さん、今はね、そういう風に“男だから”とか“女だから”とか言っちゃダメなんですよ」

 隣で聴いていた私は「子鉄さん、凄い!」と心の中で思った。60代(当時)なのに、ちゃんと、今の時代の感覚を学び、自分より20歳ほど若い世代をやんわりとたしなめている。私もかくありたいと思った出来事だ。

 小鉄さんは勉強熱心だったし、若いレスラーたちの指導もなさっていたので、その時代時代の考え方を肌で感じていたのだろう。

 シニアはシニア同士で会話して、自分たちが時代に合わなくなってきた部分を「でも、これでいいよね」と無批判に肯定したり慰め合ったりしてしまうことがある。だから、もっと若い世代、特に、平成生まれ世代と話し、今の考え方、今の価値観に耳を傾け、見直すところは見直し、常に学び直すことが大事なのだと思う。

シニアを部下に持つ管理職へのメッセージ

 「昭和の考え方や価値観」を引きずっている年上部下はまだまだいるだろう。そういう上司も、部下に比べて若いとはいえ、昭和生まれだったり、平成初期の生まれだったりするだろうから、記事の冒頭で述べた変化が起こり始めている時期に社会人になった人が多いかもしれない。すると、上司側も「昭和な部下」と似た感覚を持っている可能性もある。

 しかし、昨今の仕事に対する感覚はあなたが想像する以上に変化してきている。人生において大事なものや価値観を置くものについても全般に幅が広がり、若い世代では、仕事と同じくらいにプライベートの活動に力を入れている人も増えているように思う。おそらく年上部下はそうした変化にあなた以上に無自覚だろう。

 そこで、年上部下の「昭和な」部分を見て取ったら、やんわりと指摘してやってほしい。たとえば「その感覚、“昭和”っぽいですよ」と言ってみるのはどうだろう。「古いですよ」と言われるよりは衝撃が少なく、でも、何かをはっと気づかせてくれる。

 昭和生まれ世代であれば、若い頃に「えー、明治時代のもの?ふるーい」と思った記憶がだれにもあるだろう。それと同じような感覚で、この令和の時代、「昭和っぽい」と言われたら、多少は自分の考え方や発言などを見直す年上部下の人が出てくるのではないだろうか。
田中淳子(たなか・じゅんこ)
1963年生まれ。トレノケート株式会社 シニア人材教育コンサルタント、産業カウンセラー、国家資格キャリアコンサルタント。1986年日本DECに入社、技術教育に従事。1996年より現職。新入社員からシニア層まで幅広く人材開発の支援に携わっている。著書『ITマネジャーのための現場で実践!部下を育てる47のテクニック』(日経BP社)、『はじめての後輩指導』(経団連出版)など多数。ブログは「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」。フェイスブックページ“TanakaJunko”。

キーワード:人事、管理職、プレーヤー、人事、人材、研修、働き方改革

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