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もう「昭和」を引きずらない シニアは意識をリセットしよう トレノケート シニア人材教育コンサルタント 田中淳子

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 元号が「令和」に改まった。シニアにとっては、二度目の経験だ。シニアの多くは、昭和時代に社会人になり、若手の頃、1回目の改元を経験。故・小渕恵三(当時・官房長官)さんの「新しい元号は『平成』であります」という会見も記憶に残っていることだろう。あれから30年経った。

 平成の30年間で、職場は大きく変化した。以下、東京で働く私個人が感じている変化である(企業規模や地域によっては、当てはまらないこともあるだろう)。

・平成になってもしばらくは、オフィスが喫煙可能で、会議も煙の中で行われることもあったが、現在ではオフィスどころか、ビルごと全館禁煙というところも増えた。健康経営という側面から社員全員に禁煙を推奨する企業もある
・社内の情報共有のために回覧板を使っていたが、現在は、社内SNS(交流サイト)、電子メールなどオンラインで行うようになった
・その電子メールは、早朝や夜中に送ることもあったが、今では「業務時間外に届く」こと自体を受け手が嫌がるようになった
・社員旅行や運動会などの土日開催のイベントは参加が必須だったが、土日に会社行事を行うこと自体が「コスト削減」「WLB(ワークライフバランス)」「働き方改革」などの観点からほとんどなくなっている
・同僚同士、上司などとも年賀状のやりとりがあり、互いの住所を知っていたが、個人情報保護の観点や公私区別の明確化などから同僚のプライベートについて多くを知らない・語らないようになった
・来客に対する“お茶出し”という仕事があり、接客しない誰かにお茶をいれて運んでもらっていたが、現在はペットボトルの飲料を接客者が自分で出すようになった。飲料の来客への提供自体を行っていない企業も増えた
・受付担当が常在する個別企業専用の受付窓口が減り、受付には内線電話だけが置かれることが増えた
・パワハラやセクハラをはじめとする様々な「ハラスメント」という概念や言葉が認知されるようになった

 他にも色々あると思うが、ざっと思いついたものを挙げても、かなりの変化を経験してきている。

 「24時間働けますか?」というキャッチコピーで有名なあのテレビCMが初めて流れたのは、1988年のことらしい。平成になる前年である。今でも覚えているが、2000年代前半、上司から「仕事より大事なことがあなたにはあるのか?」と真顔で聞かれたことがあった。今、上司が部下にそんなことを言ったら、問題になる。

 平成の間に変化した様々な価値観や考え方に馴染み、改正されたり施行されたりした新しい法律などに、昭和世代のシニアは自らの感覚をその都度軌道修正しながら合わせては来ている。それでも大多数のシニアには社会人になったころの「昭和の感覚」をまだ引きずっている部分があるに違いない。

 数年前のことだ。私と同年代のシニア男性にこう言われたことがある。

 「ボクらが若い頃は、仕事なんて、誰も教えてくれなくて、先輩のやっていることを一生懸命見て、真似して、盗んだものですよね。それが、今は、そんなことをしたら、“放置された”とか“何も教えてくれないのはパワハラだ”ですもん。教えてもらわなくても盗むという根性が欲しいですよね」

 これをものすごく「昭和だなぁ」と思ってしまった記憶があるが、数年経って仕事を取り巻く環境は大きく変化している。

 そもそも30年前とは仕事のスピード感も難易度も人員の余裕も全く異なっている。

 もちろん、昭和の終わりから平成の始まりまで起きていたバブル景気のときも仕事がたくさんあって忙しかったに違いないが、今ほど、コンプライアンス(法令順守)も厳しくなかったし、情報流通のスピードも速くなかった。会社には人員面で余裕があっただけでなく、働き手は精神面でも今と比べてのんびりしていた。また、仕事ができない若手を構ってくれる先輩社員がいたし、顧客もおおらかで多少のことは大目に見てくれた。指導役となる特定の先輩がきちんとアサインされはしなかったかもしれないが、誰も仕事を教えてくれなかったと思っているのは自分だけで、誰かが若手を見守り、色々なことに挑戦させ、叱り、教え、諭し、様々な場所へ連れて行ってくれたのではないか。本人が「成長の支援」だと気づいていなかったとしても、結果として多くの人に助けられてきたはずだ。でも、今、そんな余裕は職場にない。だから、若手社員やキャリア入社者といった組織への新規参入者は他者から仕事を盗むことすらできず、誰かがきちんと指導役になり面倒を見ないと、組織に馴染むことすらできないまま、撃沈してしまうのだ。

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