誤解だらけの健康管理術

連休疲れ?五月病? 産業医が教える要相談のサイン 健康企業代表・医師 亀田 高志

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

不調があるかもしれない、と考えた時

 これらの問題があると分かった際には、職場に医師や看護職、国家資格を持つカウンセラー等の専門家がいれば、ざっくばらんに相談することをお勧めします。職場の状況を知っている専門家であれば、効果的なアドバイスをしてくれる可能性があります。できれば、信頼できる専門医を紹介してもらい、具体的な受診の方法を教えてもらいましょう。

 けれども、健康管理を担う産業医にすら、会社側に見えて相談しづらいとか、相談していることが上司にばれることを恐れる人が少なくありません。職場で健康管理を担う専門家や担当者には、法律で守秘義務が課せられていますが、健康問題によってネガティブな影響を受ける可能性はゼロではありません。もしも、安心と安全が確保されていないと感じるならば、そこで無理をする必要はないでしょう。

 その場合にかかりつけ医がいれば、精神科や心療内科が専門でなくとも相談してみるとよいと思います。身体面の病気を評価してもらいながら、精神科医にも診てもらう必要があるかどうかを教えてもらうことができます。その必要があると助言された場合には、医師は他科の専門医とのネットワークを大なり小なり持っているものですから、信頼できる専門医を紹介してもらうとよいのです。

 もしも、専門医の診察を通じて適応障害との診断を受けたら、心身や行動面の症状に合わせた内服治療を受けることになります。それ以外に物事の受け止め方、捉え方を変えていく、あるいは問題解決の方法を身に付ける心理療法を、ご本人の希望や意思に応じて、受けることができる場合があります。

 新しい環境が原因となっている適応障害では、そこから離れることが一番の解決方法ですから、主治医に一旦、療養することを勧められる可能性もあります。その場合には、産業医等の職場の専門家や家族とも、社内の手続きを確認しながら、心身の回復に努めるようにしましょう。

心機一転ではなく、頑張り過ぎないことから

 新しい環境で心身の症状や行動面の問題で悩んでいる場合以外に、新しい環境に将来、進む際の不調の予防のために考えておきたいのは、「心機一転」という捉え方をしないということです。

 心機一転の語感は、予定や計画を考える段階では、リフレッシュできて、心地良さそうです。しかし、実行の段階で状況は容易く変わります。

 受験に成功しても進学後には、勉強、宿題、授業、試験が続くだけです。同様に、昇進・昇格、転勤等を経ても、同じ会社等での仕事が続くだけです。例えば、管理職に昇進した場合には責任が増え、業績達成だけでなく、部下の管理も加わります。転職では周囲の期待が大きいこともあり、責任やプレッシャーもかかることでしょう。

 心機一転というイメージより、同じような状況が繰り返される現実に目を向けていくことがポイントです。

 また、「頑張り過ぎない」ことにも注意を向けましょう。

 高度成長期からバブル期以降に職場だけでなく、学校教育の現場でも「頑張る」、「全力を尽くす」、「乗り越える」といった言葉が行き交い、そうした価値観に重きが置かれています。

 受験や就職でも、そうした価値観に従って努力した記憶を持つ方も多いと思います。例えばアマチュアやプロスポーツに限らず、テレビやネットの中継やダイジェストで、疲労やけががあるのに出場し、結果を出した選手が称賛を浴びます。

 見方を変えれば、これらは「無理をする」、あるいは「無理を強いられる」ことでもあります。頑張る、全力を尽くす、乗り越えることは、メンタルヘルスにとって無益ではありませんが、それも程度問題であると認識しましょう。

 ストレス要因は生物学的には人間にとって生存を脅かす脅威です。そこから逃れるか、場合によって戦うという選択肢を行動上は選択することになります。心身は脳の指令からスイッチが入り、ストレスホルモンが分泌されることで様々な反応を生じます。

 このメカニズムは外敵から生き延びることが主眼ですから、瞬間的な短期決戦のためであって、長生きを意図したものではありません。ストレスホルモンによって、中長期的には高血圧、糖尿病といったメタボを促進する身体へのいわば副作用が出てきますし、抑うつ的になるといったメンタルな面の影響も無視できません。

 新しい環境に身を置く時こそ、それがストレス要因であることを自覚しましょう。無理をせず、睡眠を確保し、休養に努め、コンディションを保つことがとても大事です。お酒に頼ることはせず、無理のない程度の運動をしたり、長い休みの際にも起きる時間は一定に保ちましょう。

 そして新しそうに見えても、本当はあまり変わりのない環境が続くという認識を保ちながら、結果を出すより、まずは慣れることを優先していくとよいと思います。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。