変革のカギを握る「コラボレーション主導型CMO」とは

マーケティングの役割が広がる 一貫した顧客体験の提供が重要に アイ・エム・ジェイ 執行役員 山本 崇博

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「良い商品を作り売って終わり」という時代の終焉

 こうした問題意識に基づいて、アクセンチュアは2018年7月から同年8月にかけて、米国、カナダ、英国、ドイツ、オーストラリアでマーケティングの意思決定を行う上級役職者250人を対象にオンライン調査を実施。加えて、マーケティングの意思決定を行う上級役職者10人には詳細な電話インタビューを実施し、両調査をもとに顧客体験の重要性や顧客ニーズを満たす優れた顧客体験を提供する要素に関するリポートをまとめました。

 この調査リポートの前提となったのは、アクセンチュアが過去に行った別の調査です。

 一つでは、88%の顧客が「自分の経験をパーソナライズしてより魅力的でよりニーズに合った体験を提供してくれる会社を求めている」という結果が出ています。※1

※1 出典:Accenture Strategy Research: Exceed expectations with extraordinary experiences, 2017

 もう一つの調査では48%の顧客が「最適な商品・サービスが提供されていないと、すぐにどこか他の場所で購入をしてしまう」ということが明らかになっています。※2

※2 出典:Accenture Interactive: Making it Personal Pulse Check 2018

 そうした結果を受けていると思いますが、今回の調査結果では、調査対象企業の約87%が「従来型の体験では顧客を満足させることができない」と回答しました。つまり、マーケティングの意思決定を行う上級役職者の多くは、顧客体験の重要性を理解するとともに、顧客体験をさらに向上させなければならないと感じています。

 なぜ、これほど顧客体験の重要性を示す調査結果が出たのでしょうか?

 1990年代初めごろまでは、テレビCMなどで顧客に新商品の登場を広く知らせ、購入してもらうというマス広告が生活者マーケティングの主流でした。テレビを中心にしたマスメディアの時代だからこそ成立した戦略だと言えます。極端に言えば、良い商品を作り、その機能をテレビCMで広く認知させることでモノが売れた時代でした。

 2000年ごろからは、商品の機能による差別化が難しい時代になりました。似たようなモノがあふれ、機能性が生活者の購買行動を動かす最も大きなトリガーになり得なくなってきたのです。加えてネットメディアが台頭し、生活者が接触するメディアの種類が増えていきました。広告においてもテレビとネットといった複数のメディアを組み合わせることによって、生活者の認知を獲得し、購入につなげるようになりました。

 加えて、2008年ごろから、広告でもパーソナライズ化が進み始め、生活者の「期待値」に変化が生まれ始めました。自分の興味に関係ない広告を見ることをいやがるようになったのです。

 そして現在、あらゆる情報がインターネットを介してつながる時代になってきました。注目すべきは、サブスクリプションモデルといわれる月額課金モデルがトレンドになっていることです。商品の「所有」よりも、その時々に応じた商品の「利用」を生活者が求めるようになっています。「購入がゴール」の時代は終わり、「購入がスタート」の時代になってきたのです。

企業のブランド戦略はどう変わってきているのか?

 「購入がゴール」の時代から、「購入がスタート」の時代に変わったことで、企業はブランド戦略を大きく変化させなくてならなくなっています。顧客が商品を購入した後、再購入(サブスクリプションモデルの場合は継続)するまで、どこまで最高の顧客体験を提供しつづけられるかが重要になります。

 生活者は、「広告」だけでなく、企業とのあらゆる接点で「一貫した顧客体験」を求めています。そしてこの「一貫した顧客体験」こそが、企業ブランドを構築するのです。では、「一貫した顧客体験」とは何でしょうか?それは、ストアやセールス、コールセンターなどを対象に、商品の宣伝・広告から、販売、アフターケアまで、まさに顧客と企業におけるすべての接点(タッチポイント)を通じて総合的に作り上げる体験のことを言います。

 しかし、会社組織には部署という一見効率的に見える存在があることで、「一貫した顧客体験」の提供が阻まれてしまうことがしばしばあります。日本社会には縦割り文化があるということをよく耳にしますが、縦割り文化は、日本に限ったことではないということを前述した調査リポートは物語っています。そして、その縦割り文化がはびこる会社組織において顧客の声を一番知っているマーケター、そのトップであるCMOは会社のなかで、どのような役割を担っていくべきなのでしょうか?次回は、その問いについて考えます。

(つづく)

山本 崇博(やまもと・たかひろ)
アイ・エム・ジェイ 執行役員 マーケティング アナリティクス&サイエンス本部長
2005年、株式会社アイ・エム・ジェイ入社。データ分析・最適化のコンサルティングを担うMarketing & Technology Labs(MTL)の立ち上げより、マーケティングコンサルタントとしてROI最大化支援に従事。その後、外資系広告代理店や事業会社を経て、2012年より再びIMJに入社し、通信、放送、流通、 教育、金融など多業種にわたるクライアントのデジタルマーケティングを支援している。

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