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採用多様化、優秀層獲得は通年競争へ 伊達洋駆ビジネスリサーチラボ代表に聞く

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 経団連と大学は通年採用拡大など新卒採用の多様化で合意した。従来の新卒一括に加え、ジョブ型など複線型で進める。企業はどう対応すればよいのか。組織や人事の調査・コンサルティングを手がけるビジネスリサーチラボの伊達洋駆代表に聞いた。

通年型と一括型を併用

――今回の合意内容をどうみるか。

 経団連が定める現在の新卒採用ルールでは、大学3年生の3月に企業説明会を始め、大学4年生の6月から面接を行う日程になっている。しかし実際は、外資系企業やIT業界を中心にしたメガベンチャーが早期に動き(各社が定義する)優秀な学生を囲い込んでおり、それに対応するように一部大企業も水面下で採用を前倒ししている。今回の合意はこうし現状を追認したものといえるが、経団連加盟の大企業が自由に優秀層にアプローチできるようになることで、優秀な学生の獲得競争が激しくなる。採用活動はさらに早期化していくことになろう。

 一括採用がなくなるわけではない。一定の学生を効率的に確保する手法としてこれからも続いていく。企業は今後、優秀な学生は通年型、それに準ずる学生は一括型で採用することになるのではないか。

企業、リクルーター拡充へ

――企業はどう対応すればよいか。

 通年採用を拡大すると同時に一括型の採用も続けていくとすれば、人員が不足することになる。複数の卒業年次の学生と同時に向き合わなければならないこともあり、採用リソースの拡充が必要になる。1つは人事部以外の社員を採用に巻き込むことだ。現場社員を中心にしたリクルーターの拡充だ。採用に関するリクルーターへの権限移譲も進める必要があろう。ただ、現場社員に採用の判断を一任するとどうしても即戦力重視になる。中途採用なら問題ないが、中長期の育成を視野に入れた新卒採用にはふさわしくない面がある。権限移譲を伴うリクルーターの拡充には徹底した研修などが欠かせない。もう1つは採用の効率化だ。エントリーシートの評価や面接でのAI(人工知能)導入などHRテックを進める必要がある。

 採用競争が激化することは、学生への知名度が低い中小企業やBtoB企業にとっては逆風になる懸念がある。そうした企業はより一層、採用の工夫が必要になるが、対策はある。例えば、スカウト型や逆求人型と呼ばれる採用サービスの活用だ。学生が自己PRをサイトにアップし、それを見た企業が学生にアプローチする。このサービスは実は、企業の採用に関するブランド力の影響が小さいことがわかっている。中小企業こそ有効に活用すべきサービスだ。

学生、早期からキャリア学習を

――学生はどう就活を進めればよいか。

 採用の仕組み自体がいきなり大きく変わるわけでないので、心配をする必要はない。採用時の学業重視の流れは強まるだろうが、社会人になるためのスキルアップは従来から求められてきたものだ。ただ、採用活動の早期化は進むので大学生の早い段階から将来のキャリアについて考えていく必要はあるだろう。就活の時間が長いほど、ステレオタイプの就活の影響が少なくなることを示唆する研究もある。就活期間が短いと、この仕事は男性向き、この仕事は女性が中心といった先入観から判断し、学生が就職の検討もしない業種がある。このことは企業だけでなく、学生にとってもマイナスだ。早い段階からキャリアについて考えることは、自分の可能性を広げることにもつながる。

(聞き手は町田猛)

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伊達洋駆(だて・ようく)
ビジネスリサーチラボ代表取締役。人事サービスの共同開発、組織の調査、経営層へのコンサルティングを手がける。2013年、神戸大学大学院・服部泰宏研究室と共同で採用学研究所を立ち上げ所長に就任。2017年、日本採用力検定協会理事就任。近著に『「最高の人材」が入社する採用の絶対ルール』(共著、ナツメ社)。

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