ロジスティクス4.0 物流の創造的革新

アマゾンの圧倒的な「顧客情報」がもたらすサプライチェーンの最適化 ローランド・ベルガー プリンシパル 小野塚 征志

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 「ロジスティクス4.0」は物流における新たなイノベーションです。物流業界における「破壊と創造」、そしてイノベーションの先にある新たなビジネスの在り方について、ローランド・ベルガーの小野塚 征志(プリンシパル)氏が書籍『ロジスティクス4.0』(日本経済新聞出版社)を著しました。第2回は米アマゾン・ドット・コムのロジスティクスに関する解説を行います。

◇ ◇ ◇

アマゾンの真の姿

 ロジスティクスの未来を考えるにあたり、アマゾンの存在は無視できません。なぜなら、近い将来、世界最大の物流会社になることが十分に予想されるからです。

 アマゾンは、実はEC事業で儲けている会社ではありません。企業向けのクラウドインフラサービスであるAWS(Amazon Web Services)を利益の源泉としています。アマゾンの売上高に占めるAWSの割合はわずか10%にすぎませんが、営業利益ベースで見るとその割合は100%を超えます。つまり、ECを中心としたAWS以外の事業の合計は赤字なのです(図表2-1)。

 クラウドインフラサービス業界におけるアマゾンの存在感は抜群です。アマゾンのグローバルシェアは34%と、同第2位のマイクロソフト(Microsoft)、第3位のIBM、第4位のグーグルの合計よりも大きいのです(図表2-2)。北米だけではなく、欧州、アジア太平洋、南米といった地域別のシェアでも第1位を占めています。

 AWSは、単に安いだけではありません。仮想サーバー、ストレージ、リレーショナルデータベース、データウェアハウスといったITインフラの構築に必要な機能が揃っており、顧客の要望に広く応えられることも特長といえます。年間千件以上の新サービスの提供と機能改善を実施するなど、先進性を維持・強化するための取り組みにも積極的です。結果として、「AWSであれば、常に最新の機能を利用できる」との評価を得るに至っています。

 セキュリティ対策も盤石です。ISO 27001(情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格)やPCI DDS(Payment Card Industry Data Security Standard/機密情報のセキュリティ標準)といった、情報セキュリティに関する認証を取得するだけではなく、DDoS攻撃(Distributed Denial of ServiceAttack/複数のコンピュータから特定のシステムに多大な負荷をかけるサイバー攻撃)に対する保護サービスや仮想プライベートクラウドなども提供しています。セキュリティ対策コストが年々増加していることもあり、「情報漏洩を防ぐために、自社サーバーからAWSにデータを移管した企業」も少なからず存在します。三菱UFJフィナンシャルグループは、メガバンクとして初めてクラウドを本格活用するにあたり、AWSの採用を決定しましたが、セキュリティの堅牢性を厳密に検討した上での判断であったことは間違いないでしょう。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。