ロジスティクス4.0 物流の創造的革新

アマゾンの圧倒的な「顧客情報」がもたらすサプライチェーンの最適化 ローランド・ベルガー プリンシパル 小野塚 征志

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アマゾン=世界最大の物流会社

 AWSは、EC事業のために投資された「サーバーシステム」を外販することで高収益を得ているビジネスモデルです。EC事業を通じて培われた「顧客からの要望に徹底的に対応することでサービスレベルを高めていくスタイル」は、このAWSにおいても活かされています。ゆえに、コスト競争力とサービスレベルの両立を実現できたわけです。このAWSでの成功体験は、次なる利益の柱を構築するにあたっても活かされるはずです。物流ビジネスは、その最有力候補といえます。

 物流センターを核としたアマゾンの「物流ネットワーク」は、AWSと同様、EC事業のために投資されたアセットといえるでしょう。アマゾンは、その自前化と機能拡充を着々と進めています。世界で既に200以上の物流センターを擁し、その総面積は2000万平方メートルに達するといわれています。東京ドーム400個分を優に超える広さです。アマゾンは、その多くを自社で運営しており、棚搬送型ロボットのドライブを計10万台導入しています。事業の更なる成長を見据えて拠点ネットワークを整備するだけではなく、最先端の技術を野心的に取り込むことで、世界で最も効率的な倉庫オペレーションを作り上げようとしているわけです。

 アマゾンが保有するものは、物流センターやロボットだけではありません。米国では既に数千台規模の自社トラックを運用しています。2015年からは、一般個人に宅配業務を委託する"アマゾンフレックス(Amazon Flex)"を開始しました。ドローンを活用した宅配サービスの実用化にもチャレンジしています。日本では、宅配業務の主要な委託先であるヤマト運輸が値上げを行って以降、「デリバリープロバイダ」と名付けられた地域配送業者の利用を戦略的に増やしました。アマゾンは、ラストワンマイルさえも自社のコントロール下に置くことで、「荷物を適切に届けられなくなるリスク」への対応力を高めているといえるでしょう。

 長距離輸送に関しても同様の動きが見て取れます。航空輸送では、自社専用の貨物機を40機リースし、段階的に運用を拡大しています。海上輸送については、北米・中国間でのNVOCC(Non Vessel Operating Common Carrier/非船舶運航業者)の事業承認を取得しました。つまり、アマゾンは物流サービスの提供に必要なアセットを並の物流会社以上に保持しているのです(図表2-3)。

 アマゾンから見て、物流はAWSと同等の状況にあるといっても過言ではないでしょう。EC事業のために投資された物流ネットワークを外販するのであれば、十分なコスト競争力を発揮できます。ドライブを導入した物流センターの高効率オペレーション、予測発送に代表されるEC事業を通じて培った出荷・配送システムは、既存の物流会社以上の機能性を有します。しかも、キバ・システムズを買収後、アマゾンはドライブを門外不出としました。「モノ売り」ではなく、物流サービスという「コト売り」で収益を得ようとする戦略ゆえと推察されます。アマゾンが「世界最大の物流会社になる日」はそう遠くないはずです。

※アマゾンは、2012年にロボットメーカーのキバ・システムズ(Kiva Systems)/現アマゾン・ロボティクス(Amazon Robotics)を買収し、出荷する商品を保管棚から取り出して梱包場所まで運ぶピッキングプロセスの抜本的自動化を進めています。同社の棚搬送型ロボット"キバ(Kiva)/現ドライブ(Drive)"は、掃除ロボットを大きくしたような形状で あり、保管棚の下に入り込み、持ち上げて、出荷する商品を棚ごと運んでくることができます。

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