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通年・ジョブ型…脱日本型採用に潜む企業のご都合主義 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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 誰が辞めても新卒採用でOKという魔法のつえ

 さて、ここまで書くと、「根本的に新卒重視を辞めて中途に軸足を置けばいいではないか」という話が出るだろう。それが多様化の本意でもあるのだろうが、これこそ一筋縄ではうまくいかない厄介なことだ。

 まず、経団連傘下の大多数の企業で、中途採用はすでに活発に行われている。大手転職エージェントに行けば、そうした求人はいくらでも見つかるだろう。しかし、それが主体とはならない。

 理由は簡単だ。採れないのだ。

 私が見てきた転職エージェントの世界でも、1つの求人を出てから、それが半年以内に決定する確率で2割を達成できるエージェントはまずない。なぜ採れないのか?

 これも理由は簡単だ。中途の場合、ポスト別に採用をする。要はジョブ型採用だ。その仕事が明日からできるだけの「経験と能力」を持ち合わせなければならない。たとえば、総合商社の鉄鋼薄板担当であれば、商社の同職か、せいぜい鉄鋼メーカーにしかそれをできる人はいないだろう。こうしたピンポイントな採用だから、なかなか決まらないのだ。

 それよりも、あるポジションで欠員が出たら、社内の他地域で同職についている人を異動させて補充する方が早い。ただ、これをやると、異動してしまったポジションに空きが出る。つまり空席の横移動にしかならない。この空席の横移動を何回か繰り返すなかで、下のポジションにいるちょうどよい者を昇進させ、欠員補充を行う。これにより空席が今度は下に移動する。こうやって、空席をヨコ・ヨコ・タテと移動させ続けると、最終的にそれは組織の末端に寄せられる。役員だろうがスペシャリストだろうが、どこに欠員が出ても最終的に新卒を一人採用すればいいということになる。これは、同業同職から引き抜くよりたやすい。だから、日本企業は新卒採用を主とし、ヨコ・ヨコ・タテで埋まらない部分を補完的に中途で採用している。

欧米型雇用では魔法のつえは機能しない

これまで読んだ人は、今度はこんな疑問が頭をよぎるのではないか?

「ならなぜ、欧米は新卒採用を主にしないのか」

 その理由こそ、欧米と日本の人事管理の決定的な違いだ。欧米の場合、雇用契約は職務(ジョブ、企業内人事管理では「ポスト」)で行う。契約したポストからは容易に異動させられない。

 端的に言うと「日本企業は人事権が強い」「欧米企業は人事権が弱い」となる。勝手にヨコ・ヨコ・タテができないのだ。

 とはいえ、欧米でもよほどのへそ曲がりでない限り、タテ(=昇進)に文句を言う労働者はいないだろう。ところが、何の約束もなしに「ヨコ(他地域で同職)」に行けといわれても日本のようにYESという人はいない。下手をするとナナメ(他地域で昇進)でも一般ワーカーは文句を言う(エリートは別)。

 ということで、空席をヨコ・ヨコ・タテと末端へ移動させることができない。だから欧米企業は競合他社から採用せざるをえない。同じ理由で欧米企業は、末端に寄せられる求人が少ない。だから新卒採用も少ない。

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