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通年・ジョブ型…脱日本型採用に潜む企業のご都合主義 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

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 経団連は新卒学生の通年採用を拡大することなど採用の多様化で大学側と合意した。新卒一括採用偏重の見直しやジョブ型採用の拡大など従来の日本の雇用慣行が変わる転機になるともいわれている。中西宏明経団連会長は終身雇用の見直しにも言及した。しかし、私はどうも、「多様化」「ジョブ型」という言葉が、欧米型人事の表層だけを都合のいいように解釈している気がしてならない。現状の甘い考えで、多様化を推し進めても結局は日本型人事は大きく変えられないと考える。その理由を人事管理の実務を通して解説してみたい。

過去の自由化の結末とその教訓

 最初に、就活が自由化された場合には危うさが伴うことを指摘したい。日本型の「無限定雇用」では入社後にいくらでも異動させられる。ならば基礎能力があり、あとは人柄が自社に合っていれば、採用後に異動により適合する仕事へと誘える。要は、「ある程度の学歴(≒基礎能力)」があれば、あとは面接で人柄確認を行い採用できる。

 とすると、別に大学時代の成績などどうでもよいから、いくらでも前倒しで採用ができる。かつて、1997~2001年の間の就職協定廃止(かつ倫理協定が脆弱)で新卒採用がほぼ自由化されたとき、就活は大学2年の冬まで早期化した。このきっかけになったのは、パナソニック(当時は松下電器産業)の採用直結型インターンシップ(大学2年修了時の春休み)だ。大学生は学業崩壊状態となり、企業も経営活動に著しくダメージを受けた。

 企業側にとって、大学2年で採用すると入社は2年以上も先になる。この間に競合他社に内定者が多数流出していく。これを防ぐためには手間と金がかかる。現在でもベンチャー系企業は就活ルールなど関係なく大学3年中ごろから採用をしているが、内定入社率は高くない。

 2つ目は、2年も先だと景況や経営状況が見えず、入社時に過不足が生まれる。

 3つ目は、この間、社内の人員調整が難しくなる。「新卒が入ってくるのにリストラはけしからん」と、減員ができなくなるのだ。

 こうしたことが相まって、2002年の就職倫理規定強化(4年生の4月解禁)となり、産学ともにそれを歓迎したという過去の流れがあるのだ。

 ちなみに、通年採用という言葉も誤解を招きかねない。

(1)結局入社は4月の1回だけ、がほとんどとなろう。つまり通年入社ではない。

(2)秋口まで窓口を開けていても、めぼしい学生は就活初期にほぼ決まり、後期には内定がとれない学生しか集まらない。結果、通年採用を標榜していた企業も、数年後にはそれをやめていく。端的な例として外資系大手が日本参入から間もないころに通年採用を打ち出すことがよくあるが、しばらくすると皆、「超早期採用」に収束していく。

(3)海外留学生や理工系などの希少人材については、現在でも特別枠を設けて夏休み以降も採用している。企業は足りないものは採る。今、通年採用を標榜している企業の多くは結局「定員が埋まらない(=採用力不足か、採用数過多か)」だけだ。企業は採用枠が埋まれば自然と窓口は閉める。いい学生がいるのにそれを取らず、秋口まで定員を残すなどというお気楽な企業はない。

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