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通年採用拡大でも重要なリファラル採用、プロが教える成功の秘訣は? 人材研究所 代表取締役社長 曽和利光氏に聞く

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リファラル採用では採用担当者個人の魅力が重要に

――リファラル採用を社内で担う採用担当者には条件がありますか?

 誰でもできる工夫を挙げたあとで、身もふたもないのですが、採用の最後の最後の段階では、紹介者の元締めとなる採用担当者個人の魅力が重要になります。新卒採用でも中途採用でも同じなのですが、採用候補者が採用担当者から話しを聞いたとき、内容が濃く自分のキャリアを考えるうえで役立ったという印象を持てば、採用に結びつく可能性は高まりますし、さらに誰かを紹介するような形でどんどん採用候補者が増えるなど次の段階へ進んでいきます。いわば、会ったときの影響力が重要で、私はこれを採用における「戦闘力」と呼んでいます。

 そのため、リファラル採用へ本格的に取り組むには、人事のプロ化を進める必要があります。従来のオーディション型採用では、極端な話をすると、人事・採用支援サービス事業者に広告を作ってもらい、会社説明会もプロに頼んで開催してもらいます。また、面接も候補者のほうから来てくれるので企業はジャッジをするだけでした。そういった「上から面接」でよかった時代は、採用担当者の個人の魅力はそれほど問われなかったのですが、リファラル採用のように能動的に動く手法ではそうはいきません。

 また、さきほど述べたような細かな工夫を、結果を踏まえて改善していくことも必要で、PDCAサイクルを回すようなマネジメントも重要になります。大手企業では採用担当者を3年間ぐらいの期間でローテーションすることがよく行われますが、異動によって全部リセットされ、ノウハウがたまりません。従来も採用のプロ化の必要性については言われていて、期待したほど進んでいないわけですが、そのままだと成果を出すのは難しいでしょう。

「就職活動意識低い系」を狙うべき

――リファラル採用では、どんな人材を採用候補者として狙うべきなのでしょうか。

 私はよく「就職活動意識低い系」と呼んでいますが「キャリアコンシャスではない人」を狙うべきです。就職活動意識の高い人は「人気企業に行きたいので就職活動に積極的な人」のことです。採用では優秀であるかどうかの軸のほかに、自社に合うかどうかという軸があり、人気企業へ本当に行きたくて、人気企業に受かるような優秀な人はほぼ99%そこへ行きます。もちろん、それをひっくり返せるだけの口説き力がある超一流の採用担当者がいれば大丈夫でしょうが、一般論としてリファラル採用でも成果を出すのは無理でしょう。

 ですので狙い目は「キャリアコンシャスではない人」になります。例えば大学生でいうと、体育会で頑張ったり、勉強で頑張ったりした結果、就活は時間がなくてなかなかできないという人たちです。彼ら・彼女らは上位の人気企業であるかどうかではなく、自分の目で見て一定の基準を超えており、しかも信頼できる会社であると思ったら「ここにします」と決めて、入社までしてくれます。

 私が以前勤めていたリクルートも、何年もこの層を狙い撃ちして優れた人材を獲得してきました。私自身も先輩から声をかけてもらい、何回か話したり飲んだりしているうちによさそうな会社だなと思い入社を決意しています。当時はリクルート事件が後を引いており、世間ではいろいろ言われていましたが、手がけている事業や中にいる人たちが面白いと思ったのです。それ以降、ほかの会社の説明会には行っていません。このような人材がリファラルで採りやすく、かつ狙うべきタイプといえます。実は結果として、リファラル採用では就職活動意識低い系により多くリーチすることもできるようになり、普通のオーディション型採用より入社確率も高まります。

――リファラル採用で入社した人は離職率が低くなる傾向があるということも聞きました。

 元々存在する人と人との信頼関係が、会社の中のインフォーマルネットワークへそのまま引き継がれるからです。会社には組織や役職に基づくフォーマルなネットワークがありますが、それを補強するように大学の先輩・後輩、ゼミの先輩・後輩といった関係に基づくインフォーマルなネットワークが構築されています。リファラル採用では、そうしたインフォーマルな関係が社内に持ち込まれ、周囲の期待を容易に裏切れなくなります。また逆に、リファラル採用を強化することで、インフォーマルネットワークを強くすることができます。

――リファラル採用へ社員を巻き込むために、経営者や人事は何をすればよいのでしょうか。

 さきほど説明したように、リファラル採用では、採用候補者を紹介すること自体のハードルが高いことを経営者や人事がまずは認識すべきです。人事が最初に述べたような細かな工夫を実践・改善していく役割を担うともに、経営者が社員のモチベーションを上げる役割を担うべきでしょう。経営者は、良い仲間が増えることでこの会社は良くなっていく、そのための採用は人事だけがするのではなく、良い人がいたら自分たちが会社へ仲間として誘うという意識を持ってほしいということをモチベートしなければなりません。

 もう1つの経営者の役割は、志望度が低い優秀な人を最後に口説き落とすことです。数々の細かな工夫を凝らして、リファラル採用を行うと、これまで会えなかった優秀な人に必ず会えます。そうした優秀だけれども志望度が高くない人に、入社に対する動機づけをするときが経営者の出番です。

(聞き手はライター八鍬悟志)

八鍬 悟志(やくわ さとし)
都内の出版社に12年勤めたのちフリーランス・ライターへ。得意ジャンルは労働者の実像に迫るルポルタージュと国内外の紀行文。特にヒンドゥ教の修行僧であるサドゥを追いかけたルポルタージュと、八重山諸島を描いた紀行文には定評がある。20年かけて日本百名山の制覇を目指しているほか、国内外を走るサイクリストとしての一面も。

キーワード:経営・企画、経営層、管理職、人事、人材、研修、経営

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