ロジスティクス4.0 物流の創造的革新

進む物流の装置産業化、IoT・AI・ロボティクスで根幹から変革へ ローランド・ベルガー プリンシパル 小野塚 征志

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 蒸気機関の実用化は、船舶の運用にも変化をもたらしました。帆船と違って、天候に左右されない蒸気船の出現は、海上輸送の定時性を格段に高めました。鉄道や蒸気船を使用することで、大量の物資を遠隔地まで正確かつ効率的に運べるようになったのです。その動力源がディーゼルエンジンや電気モーターに変わった現代においても、鉄道と船舶は大量輸送の基幹であり続けています。

 「輸送の機械化」を構成するもう1つの重要な変化は、トラックの出現です。当初は蒸気式だったトラックも、20世紀に入ってからは内燃式のエンジンにシフトし、軍需から民需へと広く普及していきました。街からは馬車が姿を消し、数多(あまた)のトラック運送会社が産声を上げました。ロジスティクスにおける20世紀とは、大量輸送時代の幕開けであったといえます。

ロジスティクス2.0―荷役の自動化

 1950年代に入ると、第2の革新が始まります。「荷役の自動化」です。

 「輸送の機械化」によって、荷物を一度に大量に運べるようになったものの、積み込んだり、降ろしたりする作業は全て人手に頼っていました。今では想像できないほど多くの人員と時間を要していたわけです。経済成長を実現するためには、「経済の血脈」とも呼ばれるロジスティクスの増強を必要としますが、荷役作業はそのボトルネックになっていました。

 第二次世界大戦中、まさに「兵站」を支える荷役車両として活用されたフォークリフトは、戦後、荷役資材であるパレットとともに、物流の現場に普及していきました。フォークリフトを使えば、人間には持ち上げられない大きくて重い荷物を小回りよく動かすことができます。トラックの荷台や倉庫の保管棚に載せることも簡単です。クレーンのように、荷物とフックを固定する必要もありません。

 パレットの利用は、荷役作業の効率性を高めるだけではなく、「荷物を保管・輸送するときの大きさ」を規格化することにもつながりました。パレット単位で荷物を管理することが一般化したからです。地域・業界ごととはいえ、パレット自体の大きさにも標準規格が適用されるようになり、資材を共用することでの物流効率の向上も進みました。

 1960年代に普及した海上コンテナも荷役作業の効率化に大きなインパクトを与えました。それまでは、貨物船に積み込む荷物の形状が規格化されておらず、熟練の作業員の指示のもと、様々な大きさの木箱をうまく組み合わせながら積み上げていく必要がありました。岸壁に置かれた木箱をクレーンで吊し上げてから船内に積み込むまで、その全てが属人的な作業であり、危険な工程も少なくありませんでした。パレットに載せることができるくらいの大きさの木箱を1つずつ積み込んでいくわけです。雨が降れば作業を中断しなければならないこともあり、一万トンの荷物を積み込むのに、10日程度を要することも珍しくありませんでした。当時の貨物船は、この積み込み作業に多くの時間を要するため、港湾内に停泊している時間の方が海上で航行している時間よりも長かったといわれています。

 大型の海上コンテナは、長さが40フィート(約12.2メートル)、幅が8フィート(約2.4メートル)、高さが9フィート6インチ(約2.9メートル)と、かつての木箱が何十個も入るほどの大きさを有します。その形状はISO規格となっており、レゴブロックのように積み上げられます。クレーンの操作には熟達の経験が必要とされるものの、木箱を組み合わせるような工夫はいらなくなりました。港には、海上コンテナを吊り上げられる巨大なガントリークレーンが整備され、雨天であっても、夜間であっても作業可能となりました。海上コンテナであれば、数時間で一万トンの荷物を積み込むことができます。積み込みに要する時間は10分の1に、必要な人員数は5分の1に減少しました。

 加えて、海上コンテナを利用すれば、出発地で荷物を積み込んでから到着地に届けられるまで、コンテナ単位での輸送となるため、トレーラーからコンテナ船への積み替えも簡便となります。欧米諸国のように、海上コンテナと鉄道コンテナが共通化している地域であれば、コンテナ船と鉄道、トレーラーを組み合わせての海陸一貫輸送も可能です。盗難や紛失のリスクも大幅に減少しました。

 1960年代後半には、自動倉庫が実用化しました。マテハン機器(荷役や運搬などの作業を自動化する機械・システム)を組み合わせることで、入出荷や保管といった倉庫内の荷役作業を自動化する仕組みです。汎用性の低さや導入費用の高さは、普及に向けてのハードルとなりましたが、工場隣接の出荷センターを中心に活用が広がりました。

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