小さなサービス産業の高付加価値経営

サービス産業の「生産性革命」を探る 日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員 藤田 一郎氏

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 「Lapin.doux」がデザートのフルコースを提供するようになったのは、店の経営が軌道に乗ってからのことです。オープン当初はアラカルト形式でデザート料理を提供していました。こうしたなか「どれを選ぶか迷うから、いろいろな料理を少しずつ食べたいわ」という常連客の声があがります。このヒントからオーナーシェフはデザートのコース料理を思いついたわけですが、このとき、仕入れや仕込みなどの負担を減らすため、アラカルト形式を思い切ってやめました。この判断は、高付加価値が見込める新サービスを展開するための選択と集中といえます。

小さな企業が複数の事業を営むケースは少ないかもしれませんが、需要の拡大が見込める分野に特化することで、他社との違いを際立たせることができます。

 三つめのキーワードは「アウトソーシング」です。「ルーフコーポレーション」は、「KUHL(クール) RACING(レーシング)」という自社ブランド商品を展開しています。ここでしか買えない逸品として人気なのですが、部品の設計は自社で行う一方で、部品の製造は外部のメーカーに委託しています。あらかじめ車両にフィットする部品をつくってもらうことで取りつけ時に部品を最終調整する手間を省き、作業の効率化、時間の短縮化につなげています。利幅の改善にもつながっています。

 小さな企業の経営においては、外部資源の有効活用がポイントとよくいわれます。大企業と違って経営資源に限りがあるからというのが理由ですが、外部資源の質が低いと、サービス全体の品質を押し下げてしまう可能性もあります。外の力を借りるときはその有効性を見極めることがポイントになるでしょう。

いかに高付加価値サービスを維持するか

 優れたサービスには必ず追随者が現れます。では、各社はどうやって競争力を維持しているのでしょうか。結論を先取りすると、事例企業は「ブランド化」「要素間の連動」「絶え間ない改善」によってライバルの一歩先を走り続けています。

 「あのサービスといえばこの企業」と消費者に思わせることができればしめたものですが、小さな企業が、大企業のように広告宣伝費をかけてサービスの知名度を高めたり、ブランディング活動を展開したりすることは困難でしょう。ただ、方策がないわけではありません。ここでは二つの取り組みをみてみます。

 一つはさまざまなコンテストへの参加です。「ルーフコーポレーション」は日頃から付き合いのあった塗装業者や部品メーカーとチームを組んで日本最大規模の車の展示会「東京オートサロン」に出展し、エコカー部門の「最優秀賞」や「総合グランプリ」を相次いで受賞しました。品質を客観的に評価してもらうことで知名度を高め、サービスをブランド化することに成功しています。受賞に至らなかったとしても、次の改善策を見出す機会と捉えれば、挑戦するメリットは大いにあるといえそうです。

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