小さなサービス産業の高付加価値経営

サービス産業の「生産性革命」を探る 日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員 藤田 一郎氏

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 「ハーツ」が展開する、運転手付きトラックのレンタルサービス「レントラ便」は運送業者とレンタカー会社が提供するサービスを掛け合わせたビジネスといえます。この発想により、従来のサービスでは達成しにくかった、近場にたくさんの荷物や什器を運びたいというニーズをつかみました。市場の隙間を突いた独自サービスに競合相手はおらず、価格競争に巻き込まれることなく事業を成長させています。

 同業他社の動向を気にする経営者は多いと思いますが、他業界のビジネスモデルまで分析する経営者は案外少ないのかもしれません。視座を高くして市場全体を俯瞰したとき、思わぬところでアイデアがみつかるかもしれません。なお、本連載では紹介していませんが、海外企業の手法を日本流にアレンジする、いわばサービスの輸入でユニークなビジネスを展開している小さな企業もありました。

アイデアを実現しお金に換えていくか

 サービスの発見に続いては、いかにしてアイデアを「実現」し、お金に換えていくかがポイントになります。事例企業の取り組みから、「αテストとβテスト」「選択と集中」「アウトソーシング」の三つをキーワードとして挙げましょう。

 ソフトウエア業界では、ソフトウエアをリリースする前に2段階のテストを行うといいます。1段階目が、開発したソフトウエアが正しく動作するかどうかを社内で確かめるαテストです。2段階目が、一般ユーザーに実際に確かめてもらうβテストです。この段階ではユーザーの反応を見極め、最終調整や販売計画づくりに生かします。サービスの改善点や販売可能性を明らかにしてリスクを回避する取り組みといえます。

 冷めてもおいしいたいやき店を展開する「わらしべ」(三重県伊勢市)の取り組みは、このプロセスを着実に踏んでいるといえます。同社はまず社内での試食によって器具と生地の改良を重ね、焼きたてが一番というたいやきの常識を覆しました。次の課題は商品の価値をどう消費者に伝えていくかでした。これはαテストに該当します。次に観光客が多く訪れるロードサイドのお店に商品を出して、おみやげとして通用するかを確かめたのです。このプロセスで手応えをつかむと、いよいよフランチャイズ展開でたいやき店を増やしていったのです。

 新規性の高いサービスであればあるほど、その実現にはリスクが伴います。上手にリスクヘッジしながらサービスを拡大していくことが、高付加価値化のカギを握ります。

 複数ある事業のなかから自社の得意な事業と苦手な事業を見極め、得意な事業に経営資源を集中投下するのが、選択と集中です。これにより経営効率を高め、競争を優位に進めていきます。

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