小さなサービス産業の高付加価値経営

サービス産業の「生産性革命」を探る 日本政策金融公庫総合研究所 主任研究員 藤田 一郎氏

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 高付加価値を生み出すことで生産性を高め、存在感を発揮している小さなサービス産業の事例を紹介してきました。これまでのケーススタディーを振り返りながら、労働生産性(付加価値額/労働投入量)の分子に当たる付加価値額を増やす視点、ほかにはないユニークなサービスを生み出すポイントを探ります。

高付加価値を生む三つの「差別化」

 高付加価値を生み出すためには、他社との違いを鮮明にする、いわば差別化戦略が欠かせません。事例企業の取り組みからは、三つの差別化の視点が浮かんできます。

 一つ目の視点は、「商品・サービスの内容を差別化」で単価や販売数量のアップを狙う方法です。オーソドックスですが、ニッチな商品を販売したりユニークなサービスを展開したりして異彩を放っている事例が多くみられました。

 オリジナルの自動車カスタム部品によるドレスアップが人気の自動車販売店である「ルーフコーポレーション」(名古屋市)は、新車購入時に客の希望に合わせていくつでもパーツを追加できるサービスを用意しています。カスタムカーの市場は一般の自動車販売市場に比べると大きくありませんから、オリジナルのパーツを多数用意して客単価アップを図ることで高付加価値化を実現しています。乗り出しのときから自分好みの1台を運転できる点が、ドライバーの心をつかんでいます。

 二つ目の視点は、市場を差別化することで単価や販売数量のアップを実現する方法です。同じような商品・サービスを提供する場合であっても、相手によって価値の感じ方は異なります。より高い価値を見出してくれそうな相手にターゲットを絞って高単価を実現したり、これまで同業他社が見向きもしなかった相手にアプローチすることで、需要の波を平準化したりすることができます。

 羽田空港の近くでフライトシミュレーター施設を運営する「LUXURY FLIGHT」(東京都大田区)は、飛行機マニアをとりこにする凝ったサービスを展開し、ついには本物のパイロットまでをも顧客に取り込むことに成功しています。その一方で価格を抑えた体験プランも用意し、親子連れなど初心者のレジャー需要にも対応しています。それぞれの利用者が店を訪れる頻度や時間帯は異なるため、施設は常に高い稼働率を誇っています。飛行機マニア以外にも市場を広げたことで高生産性を実現している好例といえるでしょう。

 三つ目の視点は、プロセスを差別化することで単価や販売数量のアップを狙う方法です。ここでいうプロセスには、商品やサービスを「提供する」プロセスと、サービスの対価を「受け取る」プロセスの二つがあります。

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