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「お札に渋沢栄一」61年ぶりの復活当選 「紙幣肖像の近現代史」から(上)

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 財務省が2024年度に一新する1万円、5千円、1千円の紙幣(日本銀行券)に渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎の肖像画を採用することが決まった。この中で渋沢栄一は1963年(昭和38年)にも新・千円札に採用される寸前だったため、24年の発行時点で61年ぶりに復活当選することになる。日本紙幣史研究の第一人者で「紙幣肖像の近現代史」(吉川弘文館)の著者である植村峻氏に聞いた。

伊藤博文と新1000円札を競った渋沢

 ――5年後に発行する新札には経済人、教育者、医学者の3人が採用され、文化に貢献し国際性を持った近代日本人の中から選抜する流れを踏襲する結果となりました。その中でも資本主義経済の発展に大きな軌跡を残した渋沢栄一は以前にも紙幣肖像の候補に挙がっていました。

 「1963年から発行された伊藤博文・初代総理大臣肖像の新・千円札で、伊藤とともに最終候補として残っていたのが渋沢でした。それまでは聖徳太子像の千円札が流通していましたが、61年に深刻なニセ札事件が起きたのです」

 ――日本に限らず、紙幣の歴史はニセ札と偽造防止技術との対立の歴史ともいわれます。偽造通貨の流通は、その国の信用を揺るがす性質を持つため、各国でも金額の多少に関わらず重罰が適用されています。

 「61年暮れに秋田県や東北各県で精巧な偽造千円札が相次いで発見され『チ―37号事件』と呼ばれます。この犯人は一種の愉快犯の可能性が高く、新聞記事を参考にしながら報道されたものと異なる記番号のニセ札を次々と製造し捜査陣を翻弄しました。22都道府県で合計343枚発見されました。しかもある時点でピタリと止めてしまい、事件は迷宮入りになってしまったのです。通貨当局は陳腐化した千円札に代わる新札発行を迫られました」

 「すでに新規発行の千円券については61年ごろから東大心理学教室などを中心にした研究会が発足し、形状や色彩、肖像人物、模様などについて検討されていました。世論調査も行い政治家、文化人56人の著名人物に関する好感度がアンケートで調べられていました。伊藤博文、和気清麻呂、岩倉具視、明治天皇、野口英世、内村鑑三、渋沢栄一、夏目漱石らが当時の人々には一般的に愛好されていました」

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