ビジネス教養としてのグルメ

「シャンパン」救った不正競争防止法 「シャンパン大全」から(6)

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 シャンパンの呼称に、厳しい条件が付けられていることは、よく知られている。日本でおなじみのスペインの「カバ」やドイツの「ゼクト」は、シャンパンを名乗ることはできない。フランス北部のランス市周辺で、厳密に限定された地区で生産されたスパークリングワインだけが真のシャンパンだ。しかし、かつて日本に「カリフォルニア・シャンパン」と呼ぶ米国製の発泡酒が輸入されていたという。この問題を約10年かけて解決したのが「シャンパン大全」(日本経済新聞出版社)を著した山本博弁護士だった。

「カリフォルニア・シャンパン」の販売阻止を

 山本弁護士は「シャンパンの歴史は、本物とイミテーション(模造品)との対立の歴史」と説く。富裕層がたしなむ、高級な発泡酒というイメージに便乗した商法は昔から絶えなかった。その本格的規制を目指したのが1930年代半ばにフランスで制定された「AOC(=原産地統制呼称)」法だ。

AOC法は特定の地方・地区で生産されたワインが一定の条件を守る限り、その出生地の地名の名乗りを認める法律で「国立原産地名称統制機構(INAO)」が管理する。有名産地を騙(かた)った偽物の製造を防ぐ狙いがあり、地元では伝統を守って、個性や品質を守る効果が期待できる。山本氏は「ワインの品質を守るための画期的、革命的な制度で、現在でも欧州連合(EC連合)や各国の規範となっている」と高く評価する。

 問題は米国だった。国内で辛口の白ワインは「カリフォルニア・シャブリ」、スパーリングワインを「カリフォルニア・シャンパン」と表記して販売していた。経済成長した日本市場に注目し、1980年代に入ると本格的な需要の開拓を進めていた。

 山本氏は「日本の市場を守りたいと、フランスのINAOとシャブリ生産者管理組合から裁判の依頼が来たのは80年代の初めだった」と振り返る。本業の弁護士業務のかたわら、ワインに関する翻訳書なども手掛けており、フランス側に山本弁護士の名前はよく知られていたという。

 日本にワイン法はなかった。それに代わる法的根拠として、山本氏が活用したのが「不正競争防止法」だ。公正な競争を阻害する一定の行為を禁止することによって、適正な競争を確保し、公正な市場を確保するのが同法だ。

 しかし山本氏は「日本でいきなり訴訟を起こすのは能がないと思った」としている。1985年にはオーストリア産ワインの「ジエチレングリコール混入事件」が起きた。ワインの甘みを増すために、不凍液などに使うジエチレングリコールを混ぜていたことが発覚し、ワインの優雅なイメージは大きく損なわれた。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。