ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの挑戦

令和の新アトラクション USJ「シング」誕生秘話 USJマーケティング・ディレクター 兼 個人投資家 秋山 哲

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 今回は、私たちがこれから先の市場ニーズの変化をどう捉え、それに応えるためにどうマーケティングをしたかの話を紹介します。この話は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに平成31年(2019年)4月18日にグランド・オープンする、新時代リアル・ミュージカル・アトラクション、「シング・オン・ツアー」の導入の裏側にあったドラマでもあります。

なぜ、いま「シング・オン・ツアー」なのか

 私たちが新アトラクションの導入を本格的に検討するのは、最低でもアトラクション開業の2~3年前になります。平成29年当時、私たちは平成31年の春に導入するアトラクションを本格的に検討していました。このタイミングは、すでに天皇陛下が生前退位のお気持ちを表明されていました。私たちは、平成31年に導入するアトラクションは、結果的に平成の次の時代を担う最初のアトラクションになる可能性があると想定しました。そして、新時代を迎えるにあたり、社会の新たなニーズにふさわしいアトラクションの開発が必要だと判断し、まずは、まもなく終わる平成を振り返りました。私たちが平成を振り返ったキーワードは、「平和」、「不安」、「絆」の3つです。

 平成は、戦争が起こることなく平和に暮らせた時代で終わりつつありますが、そのおかげで私たちユニバーサル・スタジオ・ジャパンも平成13年に大阪の地で開業し、2億人に近いゲストを迎え入れ、笑顔を提供することができています。こうした活動ができているのは、私たちが平和な社会の中、企業市民でいられているおかげです。

 他方で、平成の幕開け後まもなくバブルが弾け、30年もの長期にわたり経済が停滞しています。近年はアベノミクス効果などでやや改善しているものの、世帯の平均所得はこの20年間で15%減少しています。(国民生活基礎調査、2017年)また、平均余命が伸び人生100年時代に突入した一方で、初めての人口減少に突入した時代でもあり、将来に対する不安がより大きくなった時代でもあります。

 そして、東日本大震災をはじめとした未曽有の天災も経験しました。たくさんの深い悲しみと痛みを経験しました。それでも人は助け合い、人との絆を感じ、また絆を求めた時代です。

 私たちはこのように平成を振り返り、新時代を迎えるにあたって社会に貢献すべきことは何かを考えました。平成の振り返りとともに、消費者へのインタビューやさまざまな社員と数多くの議論を経て最終的にたどり着いた貢献方法は、新時代をより明るく夢のあるものにするため、「全ての人と一緒に夢を見られるアトラクション」を開発することでした。そして、この目的を達成するために、映画「SING/シング」の世界を完全再現してアトラクションにすることを決めました。

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