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イチローさんに学ぶキャリアの重ね方、チャレンジは50代でも遅くない トレノケート シニア人材教育コンサルタント 田中淳子

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あまりに感動的なイチロー選手の引退会見に思う

 先日、同僚と「何歳まで働こうと思うか」という話になった。50歳まであと数年という彼は、こう言った。

 「70歳までは現役で働きたいと思っています」

 続いて「淳子さんは?」と聞かれたのだが、私自身、まだ考えがまとまっていなかった。「とりあえず、65歳までは仕事を続けるだろうなぁ。でもその先はどうするのかなぁ」がその際の私の答えだ。身近にキャリアの先を歩く女性がいなかったということも想像がつかなかった理由の一つだ。

 それから私は何歳まで何をどうするかについてよく考えるようになった。そのタイミングで、プロ野球のイチロー選手が引退を発表した。プロ野球には全く明るくないのだが、引退会見があまりに感動的だったので、3回くらい動画で見た上で、ネットや新聞にあった「やり取り全文」の文字起こし記事も5回くらい読んだ。

 その会見で、「最低でも50歳まで現役とおっしゃっていましたが」という問いに対して、イチローさんはこう答えている。

最低50歳までって本当に思っていたし、<中略>その表現をしてこなかったらここまでできなかったかもなという思いもあります。だから、<中略>言葉にして表現するというのは、目標に近づく一つの方法ではないかなと思います。

 どういう仕事に就いていようと、どういう立場であろうと、人はいつ引退するかを自分自身で決めなければならない。実際に70歳まで行けるかどうかは、自分の努力だけでなく、仕事の状況、その時の社会情勢、家族の問題、自分の健康など様々な要因が影響するだろうが、最初から「定年が60歳だから、そこまでかな」「雇用は65歳までしてもらえるから65歳まで働けばいいかな」と考え、そこに照準を当てて準備するよりは、さらに遠くに自分自身の目標を持つほうが、今は何を学び、どんなことを手掛け、様々な仕事や状況にどう対峙(たいじ)していくかについて、より具体的に考えやすいだろう。

 この連載の最初の方でも述べたが、キャリアのゴールラインはどんどん延長されている。それを幸いと思うのか、災いと捉えるのかは人によって異なる。でも、せっかく仕事をするのであれば、漫然と日々を過ごすのではなく、自分なりの達成感や成長実感を持ちたいのではないか。あるいは誰かの役に立っているという感覚を持つことも重要ではないだろうか。そのためには、早々に枯れてしまってはいけないし、下山準備を始めてもいけない。まだまだ山は続くのだから。

 イチローさんは、こうも言っている。

測りは自分の中にある。自分なりにその測りを使いながら、自分の限界を見ながらちょっと超えていくということを繰り返していく。そうすると、いつの間にかこんな自分になっているんだという状態になって。だから、少しずつの積み重ねが、それでしか自分を超えていけないと思うんですよね。

 さきほど触れた私の同僚のように「70歳までは一線で働きたい」と考えるのであれば、50歳でもまだまだ20年ある。新入社員が中年になるのと同じだけの時間を手にできるのだ。

 体力をつけ、健康管理をして、新しい知識やスキルもさらに学び、これまでの経験も生かし、新たな経験をその上に積み重ね、これから10年、20年のキャリアをサバイブしていきたいものだ。

 これからも自分らしく生き、自分自身や環境など様々な変化を乗り越えるためには、何歳になっても新しいことにチャレンジし、自分の能力を少しずつでも伸ばしながら、一歩一歩を刻むしかない。誰かと比較するのではなく、自分が納得いくようにキャリアを積み重ねて行けばよいのではないだろうか。

 人は何歳でも新しいことを始められるし、地道に努力をしていれば、そのことに目を向け、想いに耳を傾けてくれる同僚も、それを認めてくれる顧客も現れる。

 私自身は、53歳の時に国家資格キャリアコンサルタントを取得し、それをきっかけに若年層からシニア層までの幅広いキャリア開発を支援する仕事が増えた。記憶力の低下や老眼と戦いながら試験勉強に取り組んだことは確実に自分の仕事の可能性を広げてくれた。資格を取っただけではペーパードライバーのようなものなので、関連のトレーニングにも通い続けている。もちろん、実務でも学んだことを使おうと試行錯誤している。

 今より若い日は二度と来ないのだ。シニアであってもチャレンジするのに遅いということはない。イチローさんの記者会見はそんなことを気づかせてくれた。

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