長島聡の「和ノベーションで行こう!」

技術者の突き抜けた発想を大企業に持ち込む 第25回 Shiftall 岩佐琢磨・代表取締役CEO

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いい感じの妥協こそ極意

長島 例えば、自動車ではボディーが強いという優先順位があって、ボディーに不都合になることが提案として出ない世界観になってしまうことがあります。

岩佐 日本の家電業界はソフトウエアが圧倒的に弱いんですよ。ソフトウエア人材が末端の末端みたいな感じです。一方で、日本の企業はどこも、色々な職種が同じ給料というのが基本でした。これが最近は変わってきていて、ソフトウエア技術者の給料が非常に高くなっています。そういう構造的な課題があります。

 実はシフトールは事業に乗せるという観点があまり強くなくて、かなりエンジニア比率が高い会社です。私の専門分野としてPRが得意なので、私が担当しています。

長島 ではチームとしては、エッジの利いたいいものをつくることに集中して、ということですね。気になるのは、技術者が突き詰めると凝って、値段が上がる方向に行ってしまいませんか。

岩佐 うちのチームは決められた時間とコストの中で、どこまで妥協するかがいちばん得意です。妥協というとエンジニアを傷つけてしまうかもしれませんが、決められた時間と開発費の中に無理してでも製品を押し込んでいくことが、まさにアジャイル・マスプロダクションの極意だと思います。そこのノウハウを以前立ち上げたCerevo(セレボ)というハードウエアベンチャーから11年ぐらいやってきた中で、皆で磨き合ってきました。例えば新規事業を創出する際に、パナソニックで新製品をつくりたいと相談されたとします。パナソニックなら電池寿命が2年持つ製品を作ろうとしますが、省電力回路の設計に時間がかかるから、電池駆動寿命は1年で妥協しよう、みたいな提案や、もう電池をやめてイニシャルはアダプターをつないでしまおうといった提案をします。

長島 いい案配の妥協ができるという感覚は、どうやってつかんできたのですか。

岩佐 私から見ると、企画書に落とし穴が見えるんです。これ3年目にやった時に落ちて失敗した、とか、ベンチャー時代に落とし穴をいっぱい踏んだので、その実体験に基づいています。私がどうして落とし穴にたくさん落ちるかというと、皆がやらないことや避けていることを疑ってかかってしまう性質だからです。そういうところに新しい可能性や面白さが埋まっていたりします。その点では中国は面白かったです。深センでベンチャーを立ち上げて、色々落とし穴に落ちましたが、やっぱり得られるものがすごく多かった。結果、それが血肉になっていると感じます。

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