日経ソーシャルビジネスコンテスト関連特集

社会課題の解決 発想光る

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■パネル討論 「フロントランナーが語る最前線」

 山中氏 ソーシャルビジネスでは社会課題の解決を目的としつつ、お金が持続的にまわる仕組みも内包しなければならない。両方を満たす難しさに直面しながら戦う現場の声を聞かせてほしい。

 西原氏 「もっと身近に学びの場を」を掲げ、福岡県を中心に塾が近くにない地域で「学習塾ブランチ」を展開している。

 遠くの塾に通うには月謝や移動時間の負担が大きい。空き店舗などの遊休スペースを使い、子供は映像教材やオンラインで学ぶ。地域の方が教室を運営し、学習の進み具合をチェックする。

 とにかくコストを抑えている。分業を進めて生徒が8人でも維持できるようにした。今は離島や街のカフェ、ピアノ教室、無人駅舎の活用にも取り組んでいる。

 町井氏 家庭に薬箱を置き、使った分だけ料金を後払いする「置き薬」をアフリカに広げようとしている。薬が行き届かず、病院は遠くて待ち時間も長いアフリカの現状は、置き薬が普及した頃の日本と似ていると考えた。

 アフリカ特有の疾病やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」技術を活用した送金などに対応する必要がある。利用は徐々に増えて200件に達したが、さらに磨きをかけたい。まだまだ資金力も人材も足りない。

 西口氏 2015年に胆管がんの告知を受けたが、心配事を相談できる同年代の相手がいなかった。孤独を感じ、子供を持つがん患者の交流サイト「キャンサーペアレンツ」をつくった。利用者は3200人いる。

 活動を続けるにはビジネスも意識しなければならない。がん患者の持つ情報を企業や大学・研究機関、行政に提供したり、子供に伝えるツールとして絵本を制作・販売したりしている。患者同士が交流し、社会とつながるのが生きる力になる。

 藤野氏 ソーシャルビジネスを支援する立場からみて、起業とは「穴を見付けて埋めること」だと思う。社会課題を発見し、解決に向けてやり抜くことだ。日本には社会課題が多くあるが、目を輝かせて穴を見付け、埋める人もたくさんいる。

 山中氏 ソーシャルビジネスを取り巻く環境は進化したか。課題は何か。

 西原氏 近年は持続可能な開発目標(SDGs)への関心が高まっている。大手企業から「私たちの資源を活用して何かできないか」と相談を寄せられる機会も出てきた。ただ“穴”は遠くからだと気付かない。興味を持ったら現地に足を運んでほしい。

 町井氏 働き方改革もあり、本業と異なることに挑む人が増えてきたと感じる。私たちのスタッフも皆パラレルワーク(兼業)だ。資金もインターネットを通じたクラウドファンディングで調達しやすくなった。ただ寄付文化はまだこれから。個人にどうアプローチするかは課題だ。

 西口氏 メディアとの関係が変わってきた。当初は「がん患者=悲しいストーリー」として取り上げられる例が多かった。最近は私たち患者の生き方そのものに関心が寄せられつつある。資金集めの観点でも活動を知ってもらう取り組みは欠かせない。ビジネスライクな話ももっとできるようになっていいと思う。

 藤野氏 寄付する人は投資も、投資する人は寄付もする傾向がある。投資は企業価値が上がれば経済的なリターンがあり、寄付では社会的なリターンが得られる。日本で寄付が少ない理由の一つは、寄付先とのつながりがないからだろう。つながる感覚をいかに持ってもらうかが大事だ。皆が「穴を埋める人」を応援できれば、よい社会になっていくのではないか。

◆パネリストの略歴◆
 藤野英人氏(ふじの・ひでと) 国内外でファンドマネジャーとして活躍。03年レオス・キャピタルワークスを創業。

<第1回コンテスト受賞者>
 西原申敏氏(にしはら・のぶとし) 08年西南学院大学卒。新卒採用支援会社を経て13年にコラボプラネット設立。
 町井恵理氏(まちい・えり) 薬剤師。アフリカで医療ボランティアに携わる。15年にNPO法人AfriMedico設立。
 西口洋平氏(にしぐち・ようへい) 15年にステージ4の胆管がんの告知を受ける。現在も治療を続けながら活動中。

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