CASE革命 2030年の自動車産業

なぜ自動車業界には革命がなかった、CASEがそれを変えるワケ ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト 中西 孝樹

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 第2回では、「CASE(ケース)」による技術革命の概要を解説する。「CASE」は、クルマをIoT(あらゆるモノがインターネットにつながる仕組み)端末と位置づけてデジタル化・電動化を推進し、自動車産業を製造業からモビリティ(移動)産業へ変革させる動きの総称で、「C=Connected(コネクティッド=ネットワークへ常時接続したつながるクルマ)」「A=Autonomous(自動運転)」「S=Shared&Service(シェアリング&サービス)」「E=Electric(電動化)」という4つの重大トレンドの頭文字をもとにした造語だ。長らく革命的変化がなかった自動車産業の状況をCASEはどのように覆すのだろうか?

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なぜ、自動車産業に革命的変化がなかったか

 近代的な自動車産業の始まりをT型フォードとすれば、約100年目に自動車産業は差し掛かっている。この間、経済危機、規制強化、技術革新の荒波を自動車産業は乗り越えてきた。自動車メーカーを頂点とする産業構造や、バリューチェーン(設計や部品製造などの川上から販売やサービスにいたる川下への価値の連鎖)の分断も起こらなかった。秩序が維持され、連続的な技術革新を重ねる安定した産業であった。

 2000年初頭のインターネットバブルの狂宴の頃の話である。当時の自動車産業の最大の関心はインターネットを経由した自動車ビジネスのデジタル化であり、B2B(ネットワークを経由する法人間ビジネス)とB2C(ネットワークを経由する法人対顧客のビジネス)のネットワークに支配されることに怯えていた。

 この帰結として、自動車メーカーの付加価値は減少、ディーラーはほぼ滅亡し、ネットワークを支配する通信やIT企業が自動車ビジネスのバリューチェーンを支配すると世界のコンサルタントは声高に警鐘を鳴らした。あらゆるドット・コム企業が好機到来とばかりに自動車のバリューチェーンを切り崩しにきた。しかし、バブル崩壊後そのほとんどは死滅したのである。グーグル、アマゾンはわずかな生存者であった。

 当時、フォードのCEOであったジャック・ナッサーはITビジネスに強く傾倒していた。「フォードはもはや製造会社ではなく、サービスカンパニーだ」とナッサーは豪語していた。それを世界の機関投資家は大絶賛したものだ。しかし、サービスカンパニー構想はものにならず、大規模な製造品質問題の責任を問われ、ナッサーはフォード家によって会社から追い払われた。後始末に登場したのが創業家3代目のウィリアム(ビル)・フォード・ジュニアであり、彼の示した経営方針は「自動車メーカーの基本に立ち返る」であった。

 当時、トヨタ自動車はコネクティッドカー(つながるクルマ)の第1弾「ウィル サイファ」を発表し、ネットワーク社会とクルマがデジタルで融合する自動車産業の中で、トヨタの事業の再定義という壮大な試みに挑戦していた。走行距離に応じてリース料金が課金されるという従量制プランが導入され、現在はやりの「サブスクリプション」の先駆者となった。ところが、発売直後のブームは長くは続かず、販売低迷によりわずか3年で市場から姿を消した。

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