CASE革命 2030年の自動車産業

自動車産業の未来図描く「CASE」にダイムラーが込めたものとは ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト 中西 孝樹

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 ダイムラーのアプローチはBMWとはまったく逆を行く。EQサブブランドに向けたオペレーションをあえてメルセデス本体の開発に取り込み、双方のシナジーを生み出すプロジェクト管理とした。これはCASE対応を全社的に推進する仕組みを優先することが狙いにある。独立したCASEチームが既存の事業軸に横串を通し、CASE対応を優先したスピードアップを図り、戦略の全体最適を進めようとしている。

 EQサブブランドは、EVには「EQ」、プラグイン・ハイブリッドには「EQ Power」のブランドネームを定義し、「EQA」(Aクラスのコンパクト)や「EQC」(Cクラスのミッドサイズ)のEV専用モデルだけに留めず、「EQ Power」を既存のCクラスやEクラスの量販モデルに広く展開させている。

 エンジンには「モジュラー・エンジン・ポートフォリオ」を導入し、ガソリンかディーゼル、直列6気筒か直列4気筒、そして電動化はコンベンショナル/48ボルト・マイルド・ハイブリッド/プラグイン・ハイブリッドの2×2×3=12通りのバリエーションに整理した。内燃機関の開発リソースを効率化し、CASEに求められる技術へ十分に配分できるようにするためだ。

 伝統的な自動車ビジネスのデジタル化への対応も推進している。中国・ドイツでは2025年までに25%近くの新車販売をオンラインで実施する計画も表明している。モビリティサービスでは、すでにある基盤強化に加え、モビリティカンパニーを独立した会社組織に分離する「フューチャー・ビジョン」の会社3分割の計画が進行中である。メルセデス、ダイムラートラック&バス、ダイムラーモビリティ・サービスの3社の独立性を高め、それぞれのバリューアップを図るという考えだ。ダイムラートラック&バスは2019年に分離と株式上場(IPO)の検討に入っている。

 「CASE」という言葉には、ダイムラーの企業価値向上とマーケティング&コミュニケーション戦略の狙いが含まれていることは否定しない。「しょせん、株価対策じゃないの?」と皮肉を言う者もいる。ライバルのBMWは並びを変えて「ACES」としてダイムラーへの迎合を避けているのも事実だ。しかし、「CASE乗ってます、ACES使えます」などといった営業トークに意味があるのはこの先2、3年の短期的な話でしかない。

 4つのトレンドの先には、クルマの革命的な変化が起こる。それはモビリティサービスだけに留まらず、個人所有車、ものづくりの世界、さらには町づくりなど社会全体を巻き込んだ壮大なデジタル革命となる。

(つづく)

中西 孝樹 著 『CASE革命 2030年の自動車産業』(日本経済新聞出版社)、「第1章 「CASE革命」とは」から
中西 孝樹(なかにし・たかき)
株式会社ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト。1994年以来、一貫して自動車産業調査に従事し、米国Institutional Investor(II)誌自動車セクターランキング、日経ヴェリタス人気アナリストランキング自動車・自動車部品部門ともに2004年から2009年まで6年連続第1位と不動の地位を保った。バイサイド移籍を挟んで、2011年にセルサイド復帰後、II、日経ランキングともに自動車部門で2012年第2位、2013年第1位。2013年に独立し、ナカニシ自動車産業リサーチを設立。著書に『トヨタ対VW(フォルクスワーゲン) 2020年の覇者をめざす最強企業』『オサムイズム“小さな巨人”スズキの経営』(ともに日本経済新聞出版社)など多数。

キーワード:経営・企画、経営層、管理職、経営、営業、技術、製造、プレーヤー、イノベーション、M&A、AI、IoT、ICT

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