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褒められ慣れていないシニアが気負わず「褒める」方法 トレノケート シニア人材教育コンサルタント 田中淳子

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 40~50代の管理職やリーダー向けの研修を担当する際(私の本業は、人材開発のお手伝いである)、「部下、メンバーや後輩を褒(ほ)めていますか?」と尋ねると、多くの方が、「褒めてないなぁ」と言いながら、苦笑いする。

 理由を問うと、以下のような言葉が返ってくる。

1. 褒める箇所が見つからない

2. 褒め言葉が思いつかない

3. 褒めたら図に乗るのではないかと思う

4. 照れ臭い

 そして、最後にたいていの場合、こう続く。

「そもそも、俺たちも褒められたこと、ないもんなぁ」

 自分が若い頃もそして、ミドルやシニアになった今でも人に褒められた記憶がない。上司はダメ出しするし、顧客は文句を言うが褒めてくれることはない。だから、自分の「言葉の抽斗(ひきだし)」の中に「褒め言葉のストックがない」というわけだ

 確かに、昭和時代に若い頃を過ごした私たちシニアやそのちょっと下のミドルは、上司や先輩にそうそう褒められることはなかったかもしれない。今の時代だったら、「パワハラ」認定されそうなくらい罵倒されたり、叱られたりした記憶はおおいにあるものの、「褒める」ということなど、当時の上司の辞書にもなかったような気がする。

 「褒める」ことが大事だと言われ始めたのは、「コーチング」という考え方がビジネスの世界にも導入されたころからではないだろうか。日本で言えば、2000年前後からの話だ。コーチング・スキルの中に「承認(Acknowledgement:アクノリッジメント)」という考え方がある。「褒める」よりもより広い概念である「承認」は、「相手の言動や存在そのものを認めること」である。「承認欲求」という言葉をよく聴くようになったのも、2000年代以降だ。そして、「モチベーション」という言葉も同時期に流行(はや)り始めた(これは、サッカーブームと重なるという説を聴いたことがある。サッカー選手が「モチベーション」という言葉を多用したことがきっかけらしい)。

 「人は承認欲求を持っているし、承認することは、モチベーション向上につながる」といった文脈で語られるようになったのは、だから、ここ20年くらいのことである。

 2000年頃だと、50歳以上のシニアは、もう30代にはなっていて、若いころはダメ出しばかりされ、時代が変わってきたころ中堅になり、より一層誰からも褒められず、どちらかというと、ハッパばかりかけられ、ダメ出しはされ、どんどん要求は高くなり、そのまま「褒められる」経験もないまま、ミドル、そしてシニアになってしまっただろう。

 そして時代は変わった。「働くモチベーション」は今やとても大事だとされているし、モチベーションは、自分でマネジメントするものでもあるとともに、働く仲間同士でも配慮すべきものとなってきた。また、そのために、ダメ出しだけでなく、相手を「褒める」「承認する」ことも重要だと考えられるようになっている(これには、仕事環境の変化や働く個々人のキャリア観の変化も関係あると思うが、ここではそこまでは踏み込まないことにする)。

 さて、そんなわけで、褒められたことがないシニアが、今の部下やメンバー、後輩に褒めることを求められても、経験がないから、どうしたらいいのか分からない、という状態になってしまう。

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