ビジネス教養としてのグルメ

「泡の最高峰」を生み出す一族経営 「シャンパン大全」から(5)

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 シャンパンの中で極め付きの1本を選ぶとすれば、それは間違いなく「クリュッグ」になるだろう。「高貴な泡」の世界における最高峰といっていい。渡辺淳一郎作品の「失楽園」では、主人公2人の最後の晩さんの際に、クリュッグを飲み交わすシーンが描かれている。クリュッグ社は設立以来、一族経営を続けてきた。資本の論理より時には血縁の濃さが優先され、弊害が多いとされる一族経営だが、同社の場合は伝統的な製造手法を守っていく上でのプラスに転化させているようにみえる。「シャンパン大全」(日本経済新聞出版社)を著した山本博・弁護士に聞いた。(写真はシャンパーニュ地方の中心、ランス市の大聖堂とジャンヌダルク像)

「木樽を使った職人芸的ワイン造り」

 クリュッグ社の設立は、シャンパン業界の中ではそう古くはない。ドイツ人のジョゼフ・クリュッグが1843年にシャンパーニュ地方のランス市で設立した。息子ポール、孫ジョゼフ2世、ポール2世……と続き、直系の5代目に当たるアンリとレミの兄弟が1977年から社長、専務として経営を担ってきた。

 山本氏は「クリュッグの特徴は、徹底した職人芸的ワイン造りを続けてきた点にある」と語る。社長のアンリ自身が、自ら醸造長を兼務してきた時期も長かったという。

 ポイントは、生地となるワインの発酵を、昔ながらの木樽(たる)で行っていることだ。しかも樽の使用年数は平均35年と古いものばかり。現在主流のステンレスタンク発酵では、醸し出せない独特の芳香を与えている。ワイン自体も最上のブドウの初絞りしか使わない。

 発酵が終わるとタンクで第2次発酵のために最低5年は寝かせるという(通常は3年)。2次発酵の後のルミアージュ(オリ落とし)は手作業で4、5カ月の時間をかける入念さだ。

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