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企業の不祥事対応における第三者委員会の活用(3)費用・報酬額、全体総括 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原 信郎

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 この場面で問題なのは、上記のような相談を受けた当該企業の顧問弁護士や法律事務所が、企業の対応に関して検討し助言する業務を受任した上で、第三者委員会の設置そのものに関与することの是非である。第三者委員会の設置の是非についての助言や、委員会の設置をサポートする業務を行った弁護士は当該第三者委員会に関する利害関係者なのであるから、第三者委員会の委員や調査補助者となることは適切ではない。

 ところが、実際には、相談を受けて助言を行った弁護士が、委員会のメンバーを推薦し、その上で自ら調査補助業務を受任するというような事例もあり、委員会の調査の方向性や報告書の内容に重大な問題や疑念を生じさせることになる。

 重要なことは、第三者委員会の設置の是非についての助言や委員会の設置をサポートする業務が、設置後の委員会の業務とは切り離され、その独自の付加価値が認められることである。

 第三者委員会設置後、委員会は、依頼企業と協議して調査事項を特定し、調査補助者を選任するなどして調査体制を整備し、調査を実行し、調査報告書を取りまとめることになる。

 また、社会的に注目されている案件では、設置段階での記者会見を行い、設置の目的、調査事項、調査期間、調査体制等について説明を行うこと、調査報告書を提出し公表した段階での記者会見で、報告書の内容について説明することも必要になる。このような第三者委員会の活動すべてにおいて、「委員会中心主義」が貫かれなければならないのであり、委員会の事務を総括する立場としての委員長の職責は極めて重要である。

 問題は、このような「委員会中心主義」の下で、その能力・識見を備えた人材が委員長に選任されているとは必ずしも言えないことである。第三者委員会の活動全般を運営する職責を担える委員長の能力・識見を適切に評価することと、その人材育成を図ることが重要だと言えよう。

 最近の企業不祥事での第三者委員会では、弁護士だけで委員を構成する場合が多く、会計に関する問題の場合に公認会計士が加わる以外に、他の分野の専門家が委員に加わる例は少ない。

 第三者委員会が、不祥事企業に代わってステークホルダーに対する説明責任を果たすことを目的とするものなのであれば、実施した調査や調査報告書の内容が、その説明責任を十分に果たしたものかを評価できる委員会の構成が必要となる。そのような観点からは、品質データ改ざん、検査不正、免震性能の偽装など、製品の品質・安全性に関わる問題であれば技術面の専門家、医療に関わる問題であれば医療の専門家というような、問題の性格に応じて専門家を委員に加え、委員会内での検討・議論を行うのが合理的だと考えられる(前述した九州電力の第三者委員会では、弁護士の私が委員長を務めたほかは、社会心理学専門と会社法専門の各大学教授、消費者問題専門家という4名の委員構成であった)。

不祥事ガバナンスと第三者委員会の役割

 ここまで3回にわたって「企業の不祥事対応における第三者委員会の活用」について解説してきた。第三者委員会は、内部者中心の取締役会の構成など、従来からの日本的ガバナンスの下で、重大な不祥事への対応において必要な外部性・客観性を確保するための方法として定着してきた一つの「日本的システム」であり、法的根拠はないのに、その調査結果が社会的に尊重されるという特別の効果を生じさせるものである。しかし、第三者委員会の現状が、そのような効果を生じさせるに相応しい実体を備えたものと言えるか、はなはだ疑問である。より実効性が高いものにするため、持続的に見直していく必要があるだろう。

郷原 信郎(ごうはら のぶお)
郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士

1955年島根県松江市生まれ。1977年東京大学理学部卒業。1983年検事任官。公正取引委員会事務局審査部付検事、東京地検検事、広島地検特別刑事部長、法務省法務総合研究所研究官、長崎地検次席検事などを経て2003年から桐蔭横浜大学大学院特任教授を兼任。2004年法務省法務総合研究所総括研究官兼教官。2005年桐蔭横浜大学法科大学院教授、コンプライアンス研究センター長。2006年検事退官。2008年郷原総合法律事務所(現郷原総合コンプライアンス法律事務所)開設。2009年総務省顧問・コンプライアンス室長。2012年 関西大学特任教授。2014年関西大学客員教授。現在、公職として、国土交通省公正入札調査会議委員、横浜市コンプライアンス顧問を務めている。

キーワード:経営・企画、経営層、管理職、経営

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