郷原弁護士のコンプライアンス指南塾

企業の不祥事対応における第三者委員会の活用(3)費用・報酬額、全体総括 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原 信郎

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 前回の「企業の不祥事対応における第三者委員会の活用(2)調査事項、調査手法、報告書確定のプロセス」に続いて、第三者委員会に関する記事の3回目では、第三者委員会の費用・報酬額について述べた後、(1)(2)で述べたことも含め、全体総括として、「第三者委員会はどうあるべきか」について解説する。

第三者委員会の費用・報酬額

 第三者委員会の委員長・委員、調査補助者の報酬に関しては、依頼者の企業から一切の指示も干渉も受けず、独立した立場で調査等を行う存在であることから、報酬額の決定に関して微妙な問題が生じる。

 第三者委員会に関わる弁護士の報酬については、日弁連の第三者委員会ガイドラインで「弁護士である第三者委員会の委員及び調査担当弁護士に対する報酬は、時間制を原則とする」とされており、委員長・委員や調査補助者の弁護士については、業務を遂行するためにかかった「所要時間」に契約上定められた「1時間当たり報酬額」(単価)を乗じて報酬額を算定する時間制(タイムチャージ制)によって報酬を算定することが多い。

 しかし、第三者委員会の報酬額を時間制で算定することには疑問もある。特に問題なのは、調査補助業務に関わる弁護士の数との関係である。ヒアリングや会議に多数の弁護士が参加したとして、各自が「所要時間」を計上すると、それによって調査でかかる費用が、依頼企業の想定を超えた膨大な金額になることがあるからである。

 時間制は、弁護士の報酬請求において一般的に用いられる方法だ。しかし、通常の業務委託では、業務の内容について依頼者と弁護士とで協議した上で行われ、請求金額が当初想定される範囲を超える場合には、改めて協議が行われる。同じ委託業務に要する時間は、弁護士の能力によって差があり、非効率な弁護士の業務にかかった時間を、すべて依頼者側に負担させることはできない。また、当該業務にいくら時間がかかったとしても、その時間に単価をかけた金額が、依頼者に理解されないような金額に上っている場合には、相当な金額になるよう所要時間を削減し、最終的な請求額を、当該業務の性格や内容に応じて相当な範囲に調整する場合が多い。つまり、時間制の報酬請求額の根拠となる「所要時間」については、依頼者側と業務を受託する弁護士の側との信頼関係の下で、相応の調整を行うのが一般的だ。

 ところが、第三者委員会と依頼者の企業との関係は、顧問弁護士とクライアント企業との関係とは異なり、依頼者の企業の指示に従うことなく、独立・中立の立場で、調査等を実施するのであり、企業側は第三者委員会の動きをコントロールできない。依頼者から独立した立場とされる第三者委員会は、いかなる方法でいかなる調査を行うのか、調査補助者にいかなる調査を行わせるのか、すべて自ら決定する立場にある。調査スコープも、第三者委員会主導で、依頼企業と協議して決定する。このような立場にある委員会の委員長・委員の報酬を「時間制」で決めることにすると、自らの判断で調査範囲を拡大させれば、それによって、所要時間が増大し、報酬も「青天井」で増大することになりかねない。

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