営業デジタル改革

デジタル時代でも「あの人から買いたい」と言われる営業とは? トライツコンサルティング 代表取締役 角川 淳

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カギを握る再教育

 ではそうなったときに営業担当者は不要になるのでしょうか。実は文具業界にアスクルのようなECサイトが登場したとき、街の文具業者はほとんどなくなるだろうなどという意見がありました。しかし、確かに数は減りましたが、今もたくましく生き残っているところは少なくありません。たとえば顧客企業を訪問し、文具が入っているキャビネットの中を覗き、不足しているものを補うというような業務を代替するとか、オフィスの中を見て業務に役立ちそうなものを積極的に提案するなど、ECサイトではできない「便利な存在」となることで、しっかり顧客に認められているのです。

 これと同じことが他のBtoB市場においても確実に起こります。複雑になった社内の意思決定プロセスを前に進めるために、資料を作ってくれたり、上席者を説得してくれたりするような役割を果たしてくれる営業担当者は、新しいものを買おうとするときに貴重な存在になります。そして、そもそも自社のビジネスにおける課題は何か、それをどのように解決すべきかなどを専門家としてアドバイスしてくれたり、相談相手になってくれたりする。これができれば、顧客にとってよりありがたい存在になるのです。

 また、企業の中には、何でも自前でやるのではなく、外部パートナーをもっとうまく活用し、ビジネス拡大を進めていこうという「脱自前主義」の動きもあります。顧客の課題について一緒に考えることができるようなスキルを持つ営業担当者がいれば、その存在価値は高いでしょう。

 このように顧客から「頼りになる」「助かる」と感謝され、積極的に「あの人から買いたい」と言われる営業担当者は、これからも必要とされます。それに対し、自社の商品やサービスの説明しかできず、それもあまり上手ではなく、ちょっと突っ込んだ質問をすると「会社に戻って確認します」としか答えられないような営業担当者であれば、できの良い動画を作り、ウェブで公開した方がよほどわかりやすいし、多くの顧客に効率的に情報伝達できるでしょう。

 ただ、このように変化する顧客の購買プロセスに合わせ、存在価値を生み出せる営業を育成する手法は、ほとんどの企業で確立していないのが現実です。

 1995年から2010年までの15年間で、IT化の影響を受けて日本国内の会計業務の担当者は100万人減少しています。この次は営業職だと言われており、「これからなくなる仕事」として営業が挙げられている記事や書籍が数多くあるのはご存じの通り。そうならないためには、営業の再教育が大きなカギを握っているのです。

角川淳 著 『営業デジタル改革』(日本経済新聞出版社、2019年)、「第2章 顧客の変化についていけない営業現場」から
角川 淳(つのかわ・あつし)
トライツコンサルティング株式会社 代表取締役。京都工芸繊維大学工芸学部電子工学科を卒業後、専門商社、コンサルティング会社を経て、2012年トライツコンサルティング株式会社を設立。25年以上にわたり、B2Bマーケティング&セールス分野のコンサルティングに携わっている。現状を否定して大掛かりなスクラップ&ビルドを促すのでなく、既存の良い部分を活かし、時代の変化に合わせて「もっと楽しく」「もっとわかりやすく」「もっと顧客のために」なるように営業活動をリフォームするというスタイルが基本。それぞれの事業に合った営業のコンセプト策定から、しくみづくり、必要な組織化やシステム化、次世代リーダーの育成支援などに取り組むことで、事業の継続的な発展を支援している。また、自らプログラミングを行い、現場に合ったシステム構築までを行う。著書に『予算達成!法人営業7つのツール』(日本経済新聞出版社)など。

キーワード:経営層、管理職、プレーヤー、経営・企画、営業、経営、マーケティング、イノベーション、AI、IoT、ICT

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