日経SDGsフォーラム

SDGsの課題 ものづくりで解く 高い技術とビジョンを生かす

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 環境問題や社会の課題を解決するうえで、ものづくりの果たす役割はやはり大きい。国連の設定したSDGs(持続可能な開発目標)が私たちに投げかける宿題を解き、それが社会のためにも自分のためにもなる。そんな理想的ともいえる企業のあり方をかなえるカギとなるのは、高い技術とそれを支えるビジョンをどう生かすかだろう。

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燃えるごみからエタノール生産

 2020年の東京五輪・パラリンピックのころに、ごみをめぐる2つ目の革命を――。積水化学工業の意気込みを例えればそんな表現が浮かぶ。挑むのは、ごみを都市油田に変えるという魔法のようなプロジェクトだ。

 昔はあちこちの街頭でよく見かけた、ブルーの蓋付きプラスチック製ごみ容器。その普及に貢献したのが積水化学だった。同社によると、東京五輪が開かれた1964年に先立って「町を清潔にする運動」を展開。容器「ポリペール」を使ったごみ収集方式が東京都に採用された。

 やがて全国に広がり、現在までに3000万個以上を売り上げたという。高下貞二社長は「清掃革命」だったと呼ぶ。

 いま取り組んでいるのは、可燃ごみを丸ごとエタノールに変換する技術の実用化だ。燃えるごみをガス化し、それを米国企業の持つ微生物を利用した触媒技術で発酵させ生産したエタノールは、プラスチックの原料として利用できる。

 「すべての燃えるごみからエタノールを生産できる」と積水化学の担当者は説明する。計算上は、国内でプラスチック素材を生産するのに必要な量をすべて、ごみでまかなえるという。ちょうど2度目の東京五輪が開催される20年度の事業化を目指す。成功すれば環境問題への貢献度の高いプロジェクトとなりそうだ。

 プラスチック製品や自動車関連製品、住宅などを手掛ける積水化学は、00年代前半にエコロジーとエコノミーを両立させる「環境経営」を掲げ、一時落ち込んだ業績の回復を果たした。現在の高下社長のもとでも「環境」を経営の中核に据え、さらに今後は「ESGを経営のど真ん中に」という方針にシフトするという。ESGとは環境、社会、企業統治の3分野のことで、SDGsの考え方に通じる。

 環境分野とともに、高齢化社会や老朽化したインフラといった社会課題の解決に貢献することを重視する姿勢だ。グループ内で異なる事業をやっていても「共通語はESGということが、ある種のプリンシプル(原則)のように浸透していく」と高下社長はESGがキーワードとしてグループを束ねる効果を期待する。経営のビジョンにESGやSDGsを据えることにより、企業のめざす方向がより明確になるケースはきっと少なくないだろう。(編集委員 刀祢館久雄)

環境・社会・企業統治で次なるステージへ――
 ものづくりの会社として、事業で社会課題を解決していくのがわれわれのミッションです。「ひとびとのくらしと地球環境の向上に貢献していく」というグループビジョンのもと、日本が抱える社会課題である安全・安心、防災と減災、インフラの老朽化、超高齢化社会、地方の疲弊、人手不足や職人不足、気候変動、エネルギーといった問題の解決に取り組んでいます。

 2030年に向けて売り上げ、利益ともに倍増させるのが目標ですが、その前提としてESGを経営の中心に置きます。ESGそのものを経営戦略ととらえて持続的な成長をとげていくのです。それが一番の近道でありSDGsに貢献することにもなります。

 00年前後に当社は赤字に陥ったことがありますが、それを機に、環境を経営のど真ん中に置こうと考え、例えばソーラーパネルを載せた光熱費ゼロも可能な住宅を企画しました。

 エコロジーとエコノミーを両立させ、快適で経済性があってCO2の排出を抑制する。そういう環境貢献製品でやっていくと公言したわけです。前の東京五輪の時にはごみ容器による「清掃革命」でしたが、いまはごみからエタノールを、です。

 ほかの例として、SPR工法は老朽化した下水道管を掘り返さず、CO2もごみも極力出さずに修復する技術です。ソーラー住宅については、余った電力を当社が買い取り自社の工場で使える仕組みを開発中です。

 環境からもう一歩進化させて、今度は「ESGを経営のど真ん中に」で次のステージに行きます。グループの中で異なる事業をやっていても、ESGで際立つ、というのが共通語になるでしょう。

 いまは売上高の約半分が環境貢献製品ですが、20年代後半には売上高のすべてをESGやSDGsに資する製品にしたい。そうでない製品は退場せざるをえない、ということになると思います。

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