日経SDGsフォーラム

新しい世界 素材が開く 軽く強く柔らかく SDGsに直結

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 企業は人々の暮らしや社会を豊かにするために製品開発を行う。これまでも、これからも。技術的な裏打ちのある素材への関心が高まっているのは自然の流れであり、軽さ、強さ、柔らかさ、繊細さなどの高機能、高付加価値な素材をいかせば社会的負荷をより軽減できる。素材を通して世界を、そしてSDGsを語ることで新たな世界が見えてくるはずだ。

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持続社会の一翼 炭素繊維が担う

 素材メーカーの東レはSDGsに自然体で取り組んでいる。同社の企業理念「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」には奉仕の精神が通底にあり、事業遂行そのものがSDGsの考えと平仄(ひょうそく)が合っているからだ。日々研究開発を進めて素材の機能を向上させていくことが社会問題を解決する技術をさらに磨き上げるサイクルを生む。

 同社発展の礎の1つ、ナイロン。「鋼鉄よりも強く、クモの糸より細い」とうたわれた素材は衣料品だけでなく工業製品など幅広い分野で利用されている。私たちの生活に彩りを添え、快適な暮らしを実現させ、安心・安全にも一役買う。20世紀の大発明だ。今でもナイロンは研究開発が進み、その特長をいかした製品が生まれ続けている。

 最近では軽くて強い炭素繊維が持続的社会の一翼を担う。航空機、自動車などで使われ軽量化による燃費向上で二酸化炭素(CO2)排出抑制に貢献する。

 逆浸透膜(RO膜)は海水の塩類や微粒子などを安定的かつ効率的に除去し、超純水製造や海水淡水化、廃水再利用など幅広い用途に使用できる。土地の砂漠化に悩む国や地域での活用が一段と広がることが期待されている。水資源の管理だ。

 東レは製品化、もの作りの根っこに位置する存在だ。ナイロン、炭素繊維などは同社の素材を利用して取引先が最終的な製品に仕上げる。東レの技術が拡張性、発展性、関連性を伴って取引先のSDGsの取り組みにも貢献できることになる。

 「ユニクロ」の暖かい肌着「ヒートテック」や「ウルトラライトダウン」などはその好例だろう。付加価値のある素材があってこそ生活がより良い方向へ向かう。社会から求められる技術は結果として市場を形成し、さらなる発展の基盤を強固にしていく。

 素材は世の中の基本になるものであり、いったん眠らせておいた技術でも何かの折に使える時代がやって来ることもある。技術の蓄積、引き出しも大切だ。

 地球規模で課題が山積する中で素材技術の強みをいかす。森羅万象と向き合い、取引先などと一体となってより良き社会の実現を目指す。(編集委員 田中陽)

気候変動・医療・公衆衛生...社会は素材が変える――

 海外の投資家から「東レは福祉団体ですか」と聞かれたことがあります。企業理念について説明していたときのことです。貢献、奉仕、公器という話の内容が意外性を持って受け止められたのでしょう。我が社には事業活動そのものが社会還元につながる思想が培われています。SDGsという言葉ができる前から同様の考えを持っていて全社一丸となって取り組んできた自負があります。

 東レは中長期ビジョン「東レグループ サスティナビリティ・ビジョン」を策定し2050年に向けた世界像を示しています。地球には温暖化などの環境問題、新興国での人口増と成熟国では少子化と高齢化などいろいろな課題がありますが、そうした課題を解決する素材を開発して提供することを目指します。10年単位で時代の流れをしっかりと見極め、先読みしてニーズを明確にして計画に落とし込みます。

 中期的ビジョン達成を図る指標として30年度の数値目標も設けています。SDGsが掲げた持続可能な世界を実現するために達成すべき目標年と合致します。

 今まで以上にグリーンイノベーション(地球環境問題や資源・エネルギー問題の解決に貢献する製品の開発)に取り組むほか、ライフイノベーション(公衆衛生・医療の質の向上、健康・長寿に貢献する製品の開発)や水処理膜により新たに創出される年間水処理量を拡大していきます。気候変動対策、持続可能な循環型の資源利用と生産、安全な水と空気の提供、医療の充実と公衆衛生の普及に努め、革新技術、先端材料の提供によって本質的なソリューションを提供します。

 素材には社会を本質的に変える力があると確信しているからです。

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