先読み&深読み 経済トレンドウォッチ

大きく切り返す日米株価の値動きから今後を展望 経済アナリスト 田嶋智太郎

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

1ドル=110円台定着で日経平均は2万1000円台乗せか

 前述したとおり、米国景気は本来、FRBが“急ブレーキ”を掛けなければならないほど悪くはない。それを分かったうえでの米株高だから、それを「いいところどり」と称するのである。その一方で、実はドルも長らく底堅さを堅持している。今のところ、対円でのドルは1ドル=110円処で頭を押さえられたような格好となっているが、今後の材料やタイミング次第では意外なほどすんなり110円台に乗せ、まずはそこで値固めをするような展開となることもおおいにあり得ると見る。

 実のところ、本記事執筆時点において1ドル=110円前後の水準には複数の重要な節目が存在している。それは、一つに一目均衡表の日足「雲」上限であり、さらに週足「雲」上限や月足「雲」上限なども、ともに110円台の近い水準に居並んでいる(図表2)。これらの目立った複数の節目を順に上抜けるような展開となれば、そこから対円でのドルの上値余地は大きく開けてくるものと思われる。

 まずは、2015年6月以降に形成されている三角保ち合い(トライアングル)の上辺が一つの上値の目安となるわけだが、同水準をブレイクして「トライアングル上放れ」といった展開になれば、あらためて2017年5月以降、いく度も試しては押し戻されている114円台半ばから後半の水準が意識されることとなろう。

 仮に、そうなれば日本株の評価の前提も再び大きく変わってくる。まずは、1ドル=110円台定着で日経平均株価は2万1000円台定着から一段の上値余地拡大といった具合になるだろうか。例えば、2月5日時点の日経平均株価採用銘柄の予想株価収益率(PER)は12.04倍と計算されており、過去の経緯期から考えれば「あまりにも割安な水準に放置されたまま」という評価になるが、そこで為替に円高方向へのバイアスがかかり続けた状態であった場合は、なかなか「割安」とは言い切れなくなってしまう。

 むろん、そこで為替に円安方向へのバイアスがかかったならば話は大きく違ってくる。いずれ114~115円などといった水準が視野に入ってくるようなことにでもなれば、日本株は全般にはなはだしく出遅れた状態となり、それを見直して割安を買う動きが一気に急になることと思われる。

日経平均を大きくアウトパフォームする「資産株」

 では、ここからどんなテーマ・業種・銘柄に注目したらよいのだろうか。

 本連載の前回更新分で、筆者は2019年を通じて大きなテーマとなり得るものの一つに「5G(第5世代移動通信システム)」を取り上げた。実際、ここにきて市場における同テーマへの注目度は高まり続けており、2月1日付の日本経済新聞紙上にも『マネー、バイオの次は5G』といった見出しが躍った。同記事では、このところ他の投資テーマが相次いで輝きを失ってきた点に触れ、結果として「5Gは生き残っている数少ないテーマになり、マネーの集中につながっている面もある」としている。

 もちろん、他にもおおいに注目できるテーマは数ある。それは一つに『資産株』であり、良くも悪くも足下では1980年代のバブル期におおいに注目された「Qレシオ」という株価指標を見直そうとする動きもある。図表3に見るように、ここにきて確かに「かねて資産株として名高い銘柄群(日本空港ビルディング、TBSホールディングス、東京都競馬など)」の株価パフォーマンスがすこぶる好調であることに異論を挟む余地はない。これら企業が豊富に持つ株式や不動産などを時価評価したベースで企業価値を算出し直した場合、現在の株価はおおいに割安と判断されるケースが少なくなく、そこに目を付けた買いが目立ち始めているというわけである。

 もちろん、あのバブル期のいわゆる「ウォーターフロント相場」とは大きく異なる。あれから約30年というときが経過するなかで、不動産価格は収益還元法(賃料と利回りから物件価格を逆算する法)に基づく適正な値決めがなされるようになっているし、保有資産の換金方法も約30年前よりはるかに多様化している。また、上場企業にコーポレートガバナンス・コードの適用が開始されたことで、資本効率の向上を求める株主の求めに真摯(しんし)に対応する企業経営者の姿勢も求められる時代である。

 業種としては、やはり不動産や鉄道、倉庫、陸運、ガス、電力などといったところになろう。そうした業種に属する企業において、保有する資産を「含み」のままにしておくことは株主の手前難しい時代でもあり、当面の資産価格の上昇と今後の資産活用の行方、その効果(収益への貢献)などが投資家にとって魅力に映る企業を丹念に掘り出してみるのも一つに興味深いところと言えよう。

急成長する不動産テック企業にも注目!

 加えて、最後にもう一つ『不動産テック』というテーマも掲げておこう。

 実は本連載の前回更新分で、最後に「システム会社が投資先として有望」という話題を取り上げた。その理由の一つとして「従来はシステム投資があまり進んでいなかった不動産や建設といった業種にもシステム投資の需要が拡がっている」と述べたわけであるが、実際に近年は不動産業界においても情報通信技術(ICT)導入の必要性がみるみる高まっており、同業界は“最後の巨大市場”などと少々皮肉交じりながらも注目されている。

 不動産会社がICTの導入によって生産性の向上を図るから『不動産テック』。その活用・応用範囲は思いの外広く、それは「物件情報ポータルサイトの運営」から「ビッグデータを活用した不動産のオンライン査定」「オンラインでの重要事項の説明」「ネット経由の資金調達、クラウドファンディングの活用」などなど実に多岐にわたる。

 そんななか、市場では新興の不動産テック企業が新規株式公開(IPO)する事例なども挙がってきており、その事業内容の独自性や将来性などに対する注目度も高まっている。例えば、東証マザーズ市場に上場する「ロードスターキャピタル(銘柄コード=3482)」の場合、2014年に国内で初めて不動産特化型のクラウドファンディング(CF)サービス「オーナーズブック」をスタートさせた企業として注目されている。

 不動産を担保として企業に出資し、その企業が得た利益を基に利回りが得られる貸付型のスキームを主軸としており、言わば比較的手軽に不動産投資が小口からできる“商品”として主に30~40代の会社員の方々を中心に人気を博している。オンラインで「1口1万円から」という仕組みも人気の秘密で、投資に伴うリスクを理解したうえで参加する向きも増えているという。

 ほかに、不動産テック企業の一員と言える「GA technologies(3491)」も昨年(2018年)7月にIPOしたばかりの注目企業。人工知能(AI)を活用した中古不動産流通ポータルサービス「Renosy」や不動産オーナー向けアプリ「Renosy Insight」を開発し、創業から5年でマザーズ上場という急成長を遂げている。足下の収益も大幅な伸びを続けてており、割安なところで買って中長期的に向き合って行きたい企業の一つと言えるだろう。

田嶋 智太郎(たじま ともたろう)
1964年生まれ。慶応義塾大学卒業後、現 三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後は数年間、名古屋文化短期大学にて「経営学概論」「生活情報論」の講座を受け持つ。金融・経済全般から企業経営、資産運用まで幅広く分析・研究。新聞、雑誌、ウェブに多数連載を持つほか、講演会、セミナー、研修等の講師や、テレビやラジオのコメンテーターとしても活躍中。主な著書に「財産見直しマニュアル」(ぱる出版)、「外貨でトクする本」(ダイヤモンド社)、「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)、「はじめてのFX『儲け』のコツ」(アルケミックス)、「日本経済沈没!今から資産を守る35の方法」(西東社)、「上昇する米国経済に乗って儲ける法」(自由国民社)など。現在、日経CNBCコメンテーターを務める。

キーワード:経営層、管理職、経営、グローバル化、国際情勢

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。