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大きく切り返す日米株価の値動きから今後を展望 経済アナリスト 田嶋智太郎

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これから日米の経済は「もうひと盛り上がり」

 去る1月29~30日に行われたFOMCの声明文を見ると、足下の経済活動について前回の「力強い」という表記が「堅調な」に変更され、少々勢いが弱まっているとの認識が示された。また「漸進的利上げ」の文言が削除されたうえに、今後の取り組み姿勢については「適切な政策金利の決定にあたり辛抱強くなれる」との文言が追加されている。さらに、事前の注目度が高かった「バランスシートの縮小」については、声明文に「調整する用意がある」と記され、おまけに後の会見においてはパウエルFRB議長が「当初の想定よりも早く終了するだろう」とまで言ってのけることとなった。

 ここにきて、まさに「金融政策の正常化(からやや引き締め方向)」に向けたFRBの取り組みに急ブレーキがかけられたかのようである。確かに、一昨年(2017年)と昨年(2018年)の利上げは少々オーバーペース気味であったと言えるかもしれない。その例に違わず、古今東西、景気後退局面から脱して景気が徐々に拡大し始める当初の時間帯というのは、中央銀行が将来的なインフレ率の上昇を前倒し気味に危惧してしまうあまり、金融政策が“景気の先回り”をしてしまうということが往々にしてある。

 しかし、それによって「せっかく拡大し始めた景気の先行きが怪しくなってくる」というのもよくあることで、成長ペースの鈍化傾向を嫌気した政府・当局が、それまで正常化(あるいは引き締め方向)に向かっていた金融政策の方針をいったんハト派に傾けようとすることもよくある。いったん、金融政策の正常化(あるいは引き締め)方針に強いブレーキがかかれば、そこから再び景気は勢いよく走り始め、その後の金融政策というのはしばらくの間、どんどん先走って行ってしまう景気の「後追い」をひたすら続けることとなる。これは金融政策が背負った“宿命”と言ってもいい。

 結果として生じることとなるのが「バブル」である。もちろん、そんなバブルも最終的には様々なところで辻褄(つじつま)が合わなくなりはじめ、いつかは“崩壊”するわけであるが、その前に経済のバブルというものは、その炎をいったんメラメラと燃え上がらせるものなのである。よって、今後の日米の株価や日米の経済は「もうひと盛り上がりしてもおかしくない」と筆者は個人的に見通している。

 目下の市場には、一部で「年内の利上げは1度も実施されない可能性がある」とか「利上げどころか利下げを検討する必要さえ生じる」などといった見方もあるようだが、果たしてそうだろうか。FRBのパウエル議長にしても、ここで完全にハト派に転じたというわけではないし、これまでにも同議長の見解がコロコロと変わって市場を戸惑わせることは少なからずあった。

 よく言えば“市場との対話”を適切に行うべく様々な工夫や努力をしているわけであり、目下は「とにもかくにも米国株の買い安心感を演出することに全力を傾けている」と言っていいだろう。逆に言えば、なおもFRBは景気の先行きに自信を持っており、いずれは再び複数回の利上げなど引き締め気味の措置を講じる必要も生じると考えているのではないだろうか。仮に、近く米中間の貿易協議が一定の落とし処を見出すこととなり、米中景気の先行き不透明感が多少なりとも後退すればなおさら、米国景気や米株価、ドルなどの強みが再評価される局面が訪れやすくなるものと思われる。

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