プロ野球 平成名勝負

イチローが因縁の日韓対決を制した日

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■「韓国は絶対イチローさんと勝負してくる」

 1次ラウンドの初戦で両チームは当たり14―2で日本がまず圧倒。しかし同ラウンドの1、2位を決める試合では0―1で敗れた。続く2次ラウンドも1―4で日本連敗。試合が終わると韓国の選手がマウンドに太極旗を立てて記念撮影をした。同リーグ1、2位決定戦では6―2で日本が雪辱した。

 決勝戦を前に、日本チームには大きな懸念材料があった。イチロー選手その人の大不振だ。2次ラウンドまでの6試合で1割5分8厘。これがイチロー選手かと目を疑いたくなる惨状だった。「アドバイスできる者はいない。みな見守るだけだった」と篠山編集委員。

 決勝戦は日本が九回まで3―2とリード。しかし抑えに起用したダルビッシュ有(日本ハム)がまさかの被弾を浴び、追いつかれた。延長戦の十回2死一、三塁でイチローに打席が回ってきた。「この日は3安打と最後の最後になって当たりを取り戻していた」(篠山編集委員)。マウンドには韓国4番手でサイドスローの林昌勇投手(ヤクルト)。

 ここで後々まで議論を呼ぶプレーが出た。一塁走者の岩村選手が盗塁したのだ。一塁が空けば韓国は敬遠する可能性があった。戦術的にはそれが最善であり、プロ的には常識でもあっただろう。しかし岩村選手は「韓国は絶対イチローさんと勝負してくる」と確信していたという。

 篠山編集委員は「フィールドで戦っている肌感覚でしか捉えられない空気がある。どんな名解説者でもネット裏では分からないものを岩村選手はかぎ取っていた」と分析する。

 イチロー選手を抑えて勝ってこそ真の勝利。そうした韓国側の抑えきれない熱情を背に、林投手は球威のあるくせ球を投げ続けた。当初はファウルするのがやっとだったが、イチロー選手が8球目のやや甘めの球を中前打して2点を勝ち越した。連覇を決定的にした瞬間だった。「イチロー選手の安打は巧みなバットコントロールで、と表現されることが多い。しかし篠山編集員は「この時ばかりは、技術や読みは二の次で、ただただ気持ちでセンター前に運んだように見えた」と語る。

 WBCを終え,マリナーズのレギュラーシーズンに戻ったイチロー選手は、それまでのプレッシャー疲れが出たのか、胃腸炎で1週間ほど戦線離脱した。イチロー選手ほど自らの体調管理に細心な選手もいない。日ごろの生活まで手順を決めて不測のケガを未然に防いでいるほどだ。篠山編集員は「大リーグ時代で唯一の長期休場だった。勝者も無傷ではいられなかった」と戦いの激しさを振り返っている。(所属チームはいずれも当時)

(松本治人)

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