プロ野球 平成名勝負

イチローが因縁の日韓対決を制した日

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 どのスポーツでも、対日本戦となると異常な闘志を燃やして挑んでくるのが韓国チームだ。だから地力の差があるように見える時でも、必ず熱戦になる。野球の世界では特に「因縁」「遺恨」が絡む熱い戦いが繰り広げられてきた。そのひとつが2009年の「第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の決勝戦だ。主役を演じたのはイチロー選手(マリナーズ)。現地で取材した「プロ野球 平成名勝負」(日本経済新聞出版社)の著者、篠山正幸編集委員に聞いた。

「向こう30年、日本に手は出せない勝ちを」

 決勝戦の舞台は09年3月23日(現地時間)、米カリフォルニア州ロサンゼルスのドジャースタジアムだった。スタンドには現地における韓国系コミュニティーの大きさを示すように、日本側の何倍もの応援団が詰めかけ、試合前から異様な雰囲気に包まれていたという。ここまで両チームは1次ラウンド、2次ラウンドで2度ずつ対戦し、2勝2敗。内容も五分だった。

 日本はイチロー、城島健司(同)、福留孝介(カブス)、岩村明憲(レイズ)に松坂大輔(レッドソックス)という5人の大リーガーがそろっていた。篠山編集委員は「史上最強ともいえる陣容だった」と振り返る。他方、韓国の大リーガーは秋信守選手(インディアンズ)のみ。「大リーガーの数で決まるわけではないが、層の厚さからいって普通に戦えば何度も負ける相手ではなかった」と篠山編集委員。

 しかし普通に行かないのが日韓戦だ。

 さらにこの対決には因縁があった。06年の第1回WBCを前にイチロー選手が記者会見で「(韓国、台湾などには)向こう30年、日本にはちょっと手を出せないな、みたいな、そんな感じで勝ちたいなと思っています」と話した。「対日本」に敏感な韓国が、反応しないはずはなかった。以来、イチロー選手は韓国野球界にとって、打倒すべき宿敵ナンバーワンとなった。

 ただ会見場で実際にイチロー選手の発言を聞いていた篠山編集委員は、韓国側の受け止め方は誤解に近いと話す。イチロー発言は急進する韓国の実力を認め「警戒すべき相手」という点に主眼があったからだ。

 それでも、日本人同士による日本語のやり取りでさえ、毎日のビジネスでニュアンスの違いや曲解に困惑させられるのは、ご承知の通りだ。イチロー発言は既に一人歩きしていた。06年大会で惜敗した韓国にとって、09年大会はイチロー選手と日本へのリベンジの機会だった。

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