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職場の関係作り、昭和のノミュニケーションはもう通用しない トレノケート シニア人材教育コンサルタント 田中淳子

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1対1で部下やメンバーと話す機会を設ける

 冒頭の会合は「管理職が部下とどう関係を作るか」がテーマだったので、上下関係がある場合について、以下のようないくつか例を紹介した。

 たとえば、「1オン1(ワン・オン・ワン)」といって、今は、1対1で部下やメンバーと話す機会を設ける上司・リーダーが増えている。1対1でちょっとした面談をし、部下やメンバーの仕事の状況や困っていることを傾聴したり、キャリア観を確認したりするような場だ。

 目標管理面談には、業務の目標管理やその評価といった正式なアジェンダがあるが、大きな組織になればなるほど、目標管理面談以外で上司と部下があまり話さないというケースも多いだろう。そうした場合に、この1オン1が役立つ。目標管理や評価のためというわけではなく、上司のための時間でもなく、部下やメンバーにとって仕事を進めやすくするための時間として使う。上司に求められるのは、傾聴し、共感し、質問して掘り下げ、部下自身の気づきを引き出すような会話の仕方である。

 「1オン1」を行うことで、部下と上司の接点が増え、これにより、上司と部下の関係は、多少良くなる。もちろん、この面談の際、上司ばかりが話しているとか上司の説教やジマン話をする場になっているという場合は別物だが、きちんと聴くことさえできれば、信頼は高まり、関係も良好なものになっていくであろう。

 また、この1オン1のような1対1の対話の時間は、就業時間内に取れるので、多様な働き方をする個別の事情にも応じやすい。

 ちなみに、1オン1というと、一般には、上下関係で行うものとして捉えられているが、シニアの発達課題の一つである「世代継承性」(次世代に様々なものを継承する、次世代を育てることが、自分自身の成長にもつながるという意味で、シニアの発達課題となる)の観点からも、気になっている後輩がいれば、ちょっと声をかけて、5分程度の会話を行うのもれっきとした1オン1である。

 「何かあった?」「話くらい聴くよ」と後輩の悶々(もんもん)とした状況や経験している何かを傾聴するだけでも、後輩にとっては、すっきりするという効果もあるし、もし、シニアから有意義なアドバイスが得られれば、それはそれで意義はある。

 1オン1ほど大げさでなく、日常の仕事の中でも関係作りはできる。

 一般に人は、会話の質も大事だが、会話量が多いほど、理解し合いやすい。だから、ちょっとした時間を利用して、部下(など)の考えや想いを傾聴するのである。

 私は、よく20~30代の営業と外出することがあるのだが、彼ら・彼女らと電車で移動する際、色々と聴くことが多い。外出時は、お詫びに行くといったタフなシチュエーションでない限り、職場外であることも手伝って、移動中はなんとなくリラックスもしている。こういう状況では、普段考えていることや趣味などのちょっとした会話も交わしやくなる。

 キャリア採用で入社から日が浅ければ、「前職はどんなことをやっていたのか」「どんな思いを持って転職したのか」「この会社に入ってみてどう感じているか」といった仕事に関することや、「週末は何をして過ごしているのか」や好きなもの(食べ物でも作家でも旅行先でもなんでもよい)を聴いてみたりする。

 もちろん、プライベートな領域に踏み込む場合は、「聞いてもよければ、なんだけど」「差し支えなければ」などの枕詞(まくらことば)をつけ、「言わなくてもよい」というルールも伝えるし、自分も聴かれれば相手と同等の話はする。こういう会話は相手を知るのによいし、意外な側面を発見するのにもつながる。相手の話をとにかく傾聴することに徹していると、表面上からはうかがいしれない考えや想いを聴くことも多い。

 一方、私自身はそういう場面で自分のことを、相手が尋ねてくるまであまり話さないように自粛している。自分のことを隠したいわけではなく、自分のような年長者が話し始めると、長くなる可能性が多いのも自覚している上に、後輩としてはそれを黙って拝聴するモードにならざるを得ないだろうと考えるからだ。「淳子さんは土日何しているんですか」と聞かれるまでは、若い人たちの話を傾聴する方にエネルギーを注ぐ。シニアは、その程度でちょうどよいのだと思う。

 「1オン1」「日常のちょっとした会話」は勤務時間内でできることだが、どうしても「食事しながら」を話したいという場合は、ランチタイムを使えばよい。アルコールなしだし、終わりの時間も決まっているので、だらだらしなくても済む。それでも、ご飯を食べながらの会話は、多少、普段と異なる話題になるはずで、「へぇ」「そうなんだ」と相手を知り、自分のことを知ってもらう機会にもなる。

 「人間関係作り?じゃあ、飲みに行かねば」というのは、今でももちろん、ゼロではないが、他にも選択肢はある。関係の作り方はそれぞれに工夫してみることだ。

 そもそも、「ノミュニケーション」は、昭和(せいぜい平成前半まで)に使われていた言葉で、今やほとんど死語かもしれない。試しに、20代に「ノミュニケーションって知ってる?」と聞いてみてはいかがだろう?

シニアを部下に持つ管理職へのメッセージ

 シニアが若い人との関係作りに悩んでいるのと同じように、年下上司も年長の部下との関係作りには苦労していることと思う。確かに、シニアの中には扱いにくいタイプもいるだろうし、元は上司だった部下となると、色々気を遣ってしまい、「うーん、どう接したらよいだろう?」と悩んでいる人もいるに違いない。

 本文中、シニアは若い人たちの話を聴いたほうがよい、ということを書いた。だから、シニアの話を聴いてくれる人が必要だ。シニアは一般に昔話が好きである。上司としての役目だと思って、シニアの話もたまには傾聴してあげてほしい。

 ジマンが多少入るかも知れないが、若い上司のあなたが知らない過去のいきさつや会社の歴史など、案外、歴史的トリビアをシニアが教えてくれることもある。

 とはいえ、シニアは一般に話が長いので、夜よりは、やはり、ランチタイムをお奨めする。
田中淳子(たなかじゅんこ)
1963年生まれ。トレノケート株式会社 シニア人材教育コンサルタント、産業カウンセラー、国家資格キャリアコンサルタント。1986年日本DECに入社、技術教育に従事。1996年より現職。新入社員からシニア層まで幅広く人材開発の支援に携わっている。著書『ITマネジャーのための現場で実践!部下を育てる47のテクニック』(日経BP社)、『はじめての後輩指導』(経団連出版)など多数。ブログは「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」。フェイスブックページ“TanakaJunko”。

キーワード:人事、管理職、プレーヤー、人事、人材、研修、働き方改革

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