プロ野球 平成名勝負

長嶋監督「最終決戦」の采配を分析する

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

「あすの直接対決は国民的行事」

 長嶋監督が、世代を超えて野球ファンを魅了し続けてきたのは、巨人の4番打者としての闘志溢れるプレーと天性の勝負強さだけではないだろう。天衣無縫な人間性も、大いに寄与していたはずだ。長嶋監督を師とあおぐ中畑清氏は「自分でエラーしといて、ピッチャーに『ドンマイ、ドンマイ』とは長嶋さんにしかできない」と言う。V9時代のエースだった堀内恒夫氏も、ビンチの際にマウンドで「ホリ、あしたは休みだからね~」と妙な励まし方をされたのを覚えているという。

 「長嶋伝説」はさらに続く。翌7日の名古屋市への移動日には「あしたは国民的行事になりますよ」。自分自身が一番ワクワクしているかのようだった。避けたかったはずの最終決戦も長嶋監督にとっては、こんな試合を楽しまない手はないという、シーズン納めのお祭りのように映っていたのかもしれない。

 「監督としては追いつかれたこと自体、失態といわれても仕方がない」と篠山編集委員。しかし「長嶋監督は負けることは考えない。100%前向きで、常に野球ファンを楽しませることが頭の中心にあった」と話す。

 その最終戦で、巨人は豪華先発陣の「大名行列」を仕立てた。先発に12勝の槙原、中継ぎに13勝の斎藤雅樹、抑えに14勝の桑田真澄の各投手を投入し、カーニバルのような雰囲気をグラウンドに持ち込んだ。打線は三回に落合選手の適時打でリードし、松井秀喜選手のソロ本塁打などで6―3と差を広げていった。

 対照的に中日の投手起用は「平日モード」だったという。先発のエース・今井慎二投手が崩れると打つ手がなかった。19勝を挙げ最多勝の山本昌投手も、最後まで出番がないままだった。結果は改めて記すまでもない。胴上げで宙を舞ったのは長嶋監督だった。

 プロ野球にはエンターテインメント性が求められる。単純に勝ち負けだけの世界だったら、ここまで多くの日本人に長い間、愛され続けてはこなかっただろう。その点で長嶋監督を超える名監督はまだ現れていない。篠山編集委員は「長嶋監督はファンを楽しませ、自らも楽しむことのできる本物のエンターティナ―だった」としている。

(松本治人)

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。