日経ソーシャルビジネスコンテスト関連特集

医療衛生から食品衛生へ 多角化するサラヤのソーシャルビジネス サラヤ取締役・コミュニケーション本部本部長・代島裕世氏に聞く

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この活動の延長線上で2018年8月にウガンダで始まったのが「サラヤ・セイフ マザーフッド プロジェクト」です。ウガンダは性と生殖にかかわる医療サービスの向上を政策として掲げており、日本とウガンダの両政府、IPPF(国際家族計画連盟)のウガンダメンバー、ジョイセフなど、そしてサラヤが参画したのがこのプロジェクトでした。産婦人科クリニックの乏しい郊外においてアルコール手指消毒剤の使用を徹底させることで、帝王切開時の敗血症などの感染症で命を落とす妊産婦を1人でも減らそうという目標を掲げています。

「サラヤ・セイフ マザーフッド プロジェクト」はSDGs3番の「すべての人に健康と福祉を」の達成を目指すほか、5番の「ジェンダー平等を実現しよう」の達成も目指すものです。5番は取り組みが難しいのですが、このプロジェクトでようやく5番をカバーすることになりました。女性の子供を産む権利を尊重するのはもちろんのこと、それと同等に産まない権利も尊重しなければならないのです。

――医療衛生の次は食品衛生ですか?

ウガンダでは、まさに2018年10月にその取り組みが始まりました。首都のカンパラで「やま仙」という日本料理店がグランドオープンしたのですが、その店を企画運営するCOTS COTS Ltd にサラヤも出資し、食材調達、食材管理などフードバリューチェーンにおける食品衛生事業に着手したのです。実はこのプロジェクトは農林水産省からの助成金を得ています。「平成30年度アフリカ等のフードバリューチェーン課題解決型市場開拓事業」に採択されたのです。

「やま仙」は、アフリカとは思えないほど新鮮でおいしい魚の刺し身が自慢です。岩手県の純米酒「南部美人」がいっしょに味わえるんですよ。魚は隣国のケニアのモンパサの港に上がった魚を、サラヤが日本で培った新冷凍システムと衛生技術を活用して運んできます。日本では昨年、食品衛生法が改正され、食品衛生の管理手法であるHACCP(危害分析重要管理点)が飲食店でも取り組みが義務付けられましたが、それ以前からサラヤは実績を重ねてきました。その経験を「やま仙」で生かしていき、さらには日本流食品衛生の取り組みのショーケースとしていければと思います。

この取り組みはモンパサの漁村振興にもつながります。現在のモンパサの漁村は大変貧しく、衛生状態も劣悪。船は小さく、漁業はうまくなされていません。しかも小舟のため、海が穏やかな1年の3分の1程度しか漁に出られないのです。しかし、モンパサの沖合はとても良い漁場が広がっています。もちろん捕りすぎには配慮しなければならないのですが、漁民はもっと豊かになれるのに、もっと漁場を管理できるのに……。できていないのが問題です。日本がケニアの漁場の開発を後押しし、漁業が発展すれば、漁村は豊かになります。それだけじゃなく、それこそモーリタニアのタコのようにケニア産の高級魚を日本でも味わえるようになるかもしれませんね。

食品衛生については、日本での新しい取り組みもあります。2018年10月、大阪の「なんばスカイオ」にオープンしたフードホールの「ITADAKIMAU」で食品衛生を担うべく、出資しました。この店は、肉料理、魚料理、野菜料理、酒の4つの店の料理を自由に楽しめますが、いずれも食材の鮮度が重視されます。そこで、サラヤが開発してきた、加工・冷凍・保存・輸送・解凍を一貫して行い食品衛生管理をトータルでサポートする新コールドチェーンシステムを導入。食材ロスを減らし、労働力不足の解消につなげます。日本の農業は、作物をただ作るだけでなく、消費者のニーズを探って商品化し、消費地に流通させる6次産業化が求められて久しいですが、このシステムによって6次産業化への貢献も目指すのです。

――東アフリカでの社会貢献は着実に成果を上げています。ビジネスとしてはどうでしょうか。

ウガンダで少し見えてきましたね。予定されたビジネスが進めば、単月で黒字がでることもあるし、あとは通期黒字を目指し、目下ビジネスを多角化しているところです。ウガンダではアルコール手指消毒剤のことが「サラヤ」と呼ばれるようになりました。かつて「コピーする」ことを「ゼロックスする」と言っていたみたいにです。サラヤがウガンダに初めてきたとき、夢語りしていたことが医療現場で実現しつつあるのす。

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