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企業の不祥事対応における第三者委員会の活用(2)調査事項、調査手法、報告書確定のプロセス 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原 信郎

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 昨年11月の当コラム「企業の不祥事対応における第三者委員会の活用(1)第三者委設置の判断と人選」に続き、この第2回目では、第三者委員会における調査事項の決定、調査手法の問題、調査報告書の作成・確定のプロセスについて述べる。

 現在、勤労統計不正をめぐって厚労省が「第三者委員会」として設置した「特別監察委員会」が大きな問題になっている。関係者からの事情聴取や実際の調査を厚労省職員が行っていたこと、委員会が行う聴取に、厚労省の官房長が同席していたことなどから、「第三者性」が問題とされているが、委員会設置時に、「第三者委員会」として設置すると明言することがどういう意味を持つのか、それについて何が求められるのかを十分に理解しないまま、「第三者委員会」のレッテルを掲げてしまったことに根本的な問題があるように思われる。

 官公庁、企業と問わず、組織の重大な不祥事対応において「第三者委員会」の設置の検討が重要となっている現状において、本連載で述べている「第三者委員会の基本論」を、ぜひ活用していただきたい。

調査事項の決定・調査スコープの拡大

 第三者委員会の調査事項については、依頼者の企業が第三者委員会に委嘱する事項がベースとなるが、それだけでは、発生した問題の根本原因や本質を明らかにするために十分ではない場合、それ以外の事項を調査の対象にする――つまり、調査スコープを拡大することが必要になる場合もあり得る。問題は、このような「調査スコープ」を拡大すべきかどうかについて、誰がどのように判断するかだ。

 日弁連(日本弁護士連合会)の第三者委員会ガイドラインでは、「第三者委員会は、企業等と協議の上、調査対象とする事実の範囲(調査スコープ)を決定する」とされており、第三者委員会が主導権を持つべきとされている。

 第三者委員会は、当該企業の不祥事の根本原因を究明すべき立場にある。その問題の本質に迫るために調査スコープの拡大が必要になる場合もある。一方で、調査スコープの拡大が、当該企業の経営に重大な影響を与える場合もある。

 第三者委員会が、中立かつ独立した存在であることを振りかざして、その企業のあらゆる問題を掘り起こして、経営者を糾弾するような姿勢をとるのは、不祥事企業の信頼回復という設置目的とは真逆の行動である。中立かつ独立の委員会として十分な検討・議論を行った上、会社執行部との間で十分な協議をする必要がある。

 第三者委員会の「調査スコープ」に関して重大な問題があったことが明らかになったのが2015年5月に設置された東芝の会計不祥事に関する第三者委員会であった。

 私は、同年7月に同社の第三者委員会報告書が公表されたことを受け、様々な問題を指摘し、徹底して批判していた。同社の第三者委員会の「枠組み」に根本的な疑問があり、意図的に問題の本質から目を背けようとしているとしか思えなかった。

 このような東芝の第三者委員会の内幕を暴露したのが、日経ビジネスによるスクープであった。同誌は、第三者委員会報告書公表以降、内部告発を募集するという異例の方法まで用いて東芝不正会計問題を徹底追及していたが、同年11月に、東芝が米国の原発子会社ウエスチングハウスでの巨額の減損を隠蔽(いんぺい)していた事実を報道した。重要事実をいまだに隠蔽しようとする東芝の姿勢は、他のマスコミにも厳しく批判され、東証が、開示基準違反を指摘するに至ったのに続き、同誌は、ネット記事で、「スクープ 東芝 減損隠し 第三者委と謀議 室町社長にもメール」と題する決定的な記事を配信した。

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