日本の「中国人」社会

なぜ日本の中国人富裕層は海辺に住みたがるのか? ジャーナリスト 中島恵

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中国人富裕層が海辺に住みたがる理由

 川口市と横浜市―どちらもごく一般的な日本の住宅地の一角だが、そこに中国人が、友人や親戚などを頼って次々と集まってきて、以前には存在しなかった「中国人コミュニティ」を形成するようになった。

 川口市の場合、中華料理店も数十軒まとまっている通りがあるが、横浜中華街のように観光地化されてはおらず、最近までその存在が県外の人に知られることはなかった。"中華風"とは異なり、中国のどこにでもあるような街が、突如出現したような、独特の存在感を放つ。

 取材中、他にもこのような中国人コミュニティはあるのか、中国人の知り合いに尋ねてみると、千葉県の高浜団地、高洲団地、埼玉県の東宮下団地などの名前が挙がった。いずれも敷金などが必要ないURや県営・市営団地で、比較的家賃が安い。何らかの理由で先に住み始めた中国人がいて、そこに次々と集まってきたようだ。

 ちなみに、中国人以外では、日系ブラジル人が多い愛知県豊田市の保見団地、インド人が多い横浜市の霧が丘グリーンタウン、多国籍の人が多い横浜市の公営住宅いちょう団地などが有名だ。

 このように、中国人が集まる居住地域はあるものの、すべての中国人が特定の場所に集まっているわけではない。取材で中国人に出会うたびに住居を尋ねてみたが、私が取材した範囲では特徴的な傾向は見られなかった。

 考えてみれば当たり前のことで、東京都内だけでも約20万人もの中国人が暮らしているのだから、1カ所にまとまっていることのほうがむしろ特殊で、年々分散化しているのは自然だろう。ただし、富裕層に関しては、次のような傾向があると聞いた。

 「よく名前を聞くのは月島、豊洲、勝どき、お台場、田町、品川など比較的海辺に近い高級タワーマンションです。海辺は風水的に見て運気がよいだけでなく、窓から海の景色が見えるのは気持ちがいいようです。東京オリンピックの影響もあるかもしれません」

 東京・池袋で不動産業を営む朱海氏はこう語る。

「爆買い」が騒がれた2015年ごろ、朱氏は中国に住む人々の投資用として日本のワンルームマンションを斡旋していた。だが、最近では、セキュリティが万全で高級感があることから、とくに富裕層の中国人が自宅用としてタワーマンションを購入したいという希望が増え、その仲介も行っているという。

 オフィスビルでも海や川に近いことは中国では「風水的にいい」とされている。ある中国人の友人のオフィスは茅場町のビルの最上階にあるが、「何といっても最上階は風水がいいので、オフィスを転居する際、ぜひ最上階にしたいと決めていました。眺めもいいし、近くに川もあって、中国人からみるととてもいい立地なんですよ」と話してくれた。

 ほかにも、18年になって転居した知人の在日中国系企業のオフィスを確認してみると、大手町、八重洲、浜松町、八丁堀などの高層ビルが多く、なかには同じく最上階もあった。

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